2022.05.31

"裏"ツーリングマップル!? -地図に載せきれない・載せられない取材ネタ- Vol.6 高野山を案内してくれた犬~

ツーリングマップルでは、毎年各エリアの取材担当がバイクで実走取材を行っています。取材は春から秋にかけて合計で約30日間ほど行われ(準備期間を含めるともっと日数をかけています)、その中で、担当者はいろいろな情報を入手します。しかし実際に地図上に載る情報は、その中のごく一部にすぎません。ツーリングマップルは本なので、スペースに限りがありますし、すごくおススメなんだけどたくさんのお客さんが一度にくると対応できない施設や、いつやめるか分からないお店なども…。そんなさまざまな事情で紙面に載せられなかった情報を、今回”裏”ツーリングマップルとしてご紹介していきます。 今回は関西担当の滝野沢さんから、高野山の名物犬にまつわるお話を紹介します。

著・滝野沢優子

【慈尊院にいた高野山案内犬ゴン】


高野山の麓、九度山町にある「慈尊院(ツーリングマップル関西17H-2)」。ここは、「女人禁制」だった高野山に入れない空海の母が晩年住んだ寺で、「女人高野」とも呼ばれている。空海はその母を高野山から月に9度訪ねてきたのでここに「九度山」の地名が付いたとか。一般的には子宝、安産、授乳、乳がん治癒などを祈願する寺で、乳房型の飾りが付いた絵馬がたくさん奉納されている。その場面は映画「紀ノ川」にも登場しているが、私にとっては、「高野山案内犬ゴン」のお寺だ。 「ゴン」は昭和60年代頃、このあたりに居た白い雄の野良犬で、紀州犬と柴犬の雑種。最初は九度山駅に着いた参詣者を慈尊院まで案内していたが、いつしか慈尊院をねぐらにし、高野山への道案内を始めた。片道20㎞ほどの石道を参詣者と一緒に歩き、大門まで行ってから慈尊院に戻ってくるという生活だったそうだ。2002年6月5日に亡くなったが、住職に聞いたところ、27歳だったとのこと(ホントか?)。生きているうちに一度会ってみたかったなあ。

慈尊院

映画「紀の川」(引用:松竹)

【参拝客を出迎えてくれたカイくん】


その後、ゴンが亡くなった日からちょうど2年後に、カイくんというやはり白い犬がやってきたが、ご時世もあり放し飼いができないため、高野山へ案内することはなかった。いつしかカイくんも亡くなって、現在境内に犬はいないが、ゴンの石像が弘法大師(空海)像の横に鎮座している。

カイくん

カイくんも白毛の犬、境内でのんびり過ごしてました

ゴンの石像と弘法大師像

【じつは歴史が古い高野山の案内犬】


じつは、弘法大師の時代にも「高野山案内犬」はいたそうで、隣接する丹生官省符神社(にうかんしょうぶじんじゃ)境内には、黒白2匹の犬を従えた狩場明神と、弘法大師(空海)が出会う絵図があり、この2匹の犬が弘法大師を高野山に導いたと言われている。ゴンの話は絵本にもなっていて、住職が参詣者にもよくゴンの話をしている。

狩場明神(右)と弘法大師(左)が出会う絵図に描かれた黒と白の2匹の犬

調べ始めると興味がどんどん湧いてくる!


いかがでしたか?ツーリングマップル関西には、慈尊院は名前だけ、高野山はいくつか解説も載っていますが、ゴンやカイくんのお話はやはり長いので地図上には載せられていません。ですが、現地に行ってみたり、事前に調べていくと、こういうお話が出てきて興味が尽きません。地図で見て、気になった場所の名前から広がっていく知識や好奇心が旅をより面白くします。世界がどんどん広がっていきます。ぜひツーリングマップルを活用してくださいね!

左:通常版(税込¥2,200) 右:R版(税込¥3,300)