2022.06.03

"裏"ツーリングマップル!? -地図に載せきれない・載せられない取材ネタ- Vol.7 担当エリア外でも紹介したい「徐福伝説」

ツーリングマップルでは、毎年各エリアの取材担当がバイクで実走取材を行っています。取材は春から秋にかけて合計で約30日間ほど行われ(準備期間を含めるともっと日数をかけています)、その中で、担当者はいろいろな情報を入手します。しかし実際に地図上に載る情報は、その中のごく一部にすぎません。ツーリングマップルは本なので、スペースに限りがありますし、すごくおススメなんだけどたくさんのお客さんが一度にくると対応できない施設や、いつやめるか分からないお店なども…。そんなさまざまな事情で紙面に載せられなかった情報を、今回”裏”ツーリングマップルとしてご紹介していきます。 今回は中部北陸担当の内田さんから、担当エリア外の丹後半島に伝わる「徐福伝説」をお届けします。

著・内田一成

【徐福伝説とは】


紀元前2世紀。始皇帝は中国全土を統一して秦を作り上げた。この世の富と権力すべてを手にしたといっても過言ではない始皇帝。しかし、その強大な権力と富を持ってしても手に入らない唯一のものがあった。 それは、永遠の命。 その永遠の生命を手に入れるための妙薬がはるか東の海上の蓬莱山にあると、始皇帝に説き、その妙薬を手に入れるようにという命を受けて、大船団を組織して東海へと旅立ったのが方士(仙術師)徐福だった。 かつては、その「徐福伝説」は架空の話とされていたが、中国本土で実際に徐福が存在し、大船団を組織して船出した証拠も見つかった。中国の沿岸部から東へ向かえば朝鮮半島もしくは日本列島のどこかにたどり着く。朝鮮半島にも日本にも、徐福の一行がたどり着いたという伝説が残る地がたくさんある。

徐福像(引用:佐賀市観光協会)

【徐福が祀られている新井崎神社】


そのうち、最有力とされるのが丹後半島。その突端にあるのが新井崎神社(ツーリングマップル関西75M-7)だ。 この新井崎神社に祀られているのは、ほかならぬ徐福。徐福を祭神とする神社はここしかない。 じつは、もう30年以上前から、個人的に徐福に係わる場所を日本中で訪ねて歩いているのだが、昨年の取材では、若狭まで足を伸ばしたついでに、この新井崎神社までもうひと足伸ばしてみた。かつては、国道をひたすら走って、若狭から4,5時間かかったところが、今は高速が伸びて、2時間もかからずに行けるようになった。それで足を伸ばしたというわけ。 丹後は残念ながら関西エリアで、中部北陸版の地図からは外れてしまうため、自分のエリアでは紹介できない。 関西版では、担当の滝野沢優子さんがコメントを記している。 断崖上にあって、砕ける波濤と青い海を見下ろすロケーションは迫力がある。今から2000年以上前に、海を渡ってここまでたどり着いた徐福一行が見渡した風景かもしれないと想像しながら見ると、遠く中国大陸の風景が幻のように浮かび上がってきそうに思える。

断崖上の新井崎神社から若狭湾を見渡す

由緒書には、祭神が徐福であると記されている

歴史を知って見ると景色は大きく違ったものになる


内田さんのお話はいかがでしたか? 最後の一文「今から2000年以上前に、海を渡ってここまでたどり着いた徐福一行が見渡した風景かもしれないと想像しながら見ると、遠く中国大陸の風景が幻のように浮かび上がってきそうに思える。」という部分が歴史を学んで旅する面白さでして。その舞台に立った時に「ああ、かつてここでこういうことがあったのか」とか、今はさびれた古い町で「昔はココにもたくさん人がいたんだよな」とか想像しながら眺めることができるというのは、ただ漫然とそこに立つ何倍も面白いのではないかと思います(何も考えずに絶景に圧倒されるというのもそれはそれで良いのですが)。 ツーリングマップルに載せられているキーワードをきっかけにして、もっと旅を深く魅力的なものにしていただけると嬉しいです。

左:通常版(税込¥2,200) 右:R版(税込¥3,300)