2022.09.08

暑い夏は、涼しく知的にツーリング!おすすめミュージアム5選!~中部北陸編~

例年通りの猛暑が続いていますが、夏の日差しが堪らないときは屋内で過ごせるミュージアムや資料館などを巡るのもおすすめです。歴史や地形など、フィールドワークに生かせる情報を学ぶのも良し、芸術に触れるのも良し、いつものツーリングとは少し違う楽しみかたをしてみませんか。 第7回は内田さんから中部北陸エリアのおすすめ5スポットを紹介です

著・内田一成

【紹介スポットMAP】


 

1.金沢21世紀美術館(石川県)【切り取られた空に宇宙の深さを感じる】


金沢21世紀美術館といえば、世界的にも指折りのキュレーションのセンスを誇る美術館で、企画展は刺激の高いものばかりだけれど、それはもちろん良いとして、個人的には、常設のジェームズ・タレル作品《ブルー・プラネット・スカイ》が大の気に入りだ。 モルタルと石壁のスクエアでミニマルな部屋は、天井が正方形に切り抜かれていて、ただ空だけが見える。快晴なら、ただ青い空がそこにオブジェのようにあって、雲が流れていれば、なにやら走馬灯を眺めているような気分になれる。 ただ、この部屋でボーッとしていると、時間を忘れて、極上のメディテーションを味わった気分になる。タレルは、アリゾナのクレーターで壮大な空の切り取りをしたり、瀬戸内芸術祭では、暗闇のなかで10分あまりも目を見開いていると微かな光を感知するようになったりと、人間のとくに視覚に訴えかける作品を得意とするけれど、究極のシンプルさの中に、タレルの「魔術」が見られるだけでも、この美術館に足を運びたくなる。

建物はガラスを多用した開放的なデザイン(引用:まっぷるトラベルガイド)

2. 若狭三方縄文博物館(DOKIDOKI館)(福井県)【縄文の奥深い精神にどっぷり浸かる】


巨大な円墳のような構造を取り巻くスロープを登っていくと、ピラミッドの入り口のようなエントランスが待ち構えている。そして、今度は、地下の玄室へと潜っていくような感覚で、展示スペースに導かれていく。あえて、地下を掘り下げたことで、縄文の「原記憶」へと下降してくような感覚が味わえるのが憎い。 縄文の出土品の展示などというと、修復土器や修復土偶がただ並べてあるというのがありがちだけれど、ここは鳥浜遺跡という至近の遺跡からの出土品を集めながら、それを当時の縄文人の感覚で見ながら、縄文の精神に深く沈潜していくような演出となっている。この演出をしたのは、初代館長の梅原猛。日本文化を多面的でかつ多層的に研究して、ときに学者というよりもアーティスト的だった彼らしい「作品」ともいえる。 昨今、縄文がブームになっているけれど、縄文を語るのに、ここを訪ねずしてはもぐりのようなもの。そして、できれば、梅原猛の著作を何冊かは読んで、雰囲気をより味わえるようにしておきたい。

巨大な円墳をイメージさせる独特のデザイン(引用:まっぷるトラベルガイド)

3.養老天命反転地(岐阜県)【不思議なアート空間で造形作品を体感】


人間のバランス感覚を奇妙に錯覚させる造形作品群が並び、その作品の中に入ってサイケデリックともいえるような体験ができる体感型ミュージアムともいうべき場所。不思議な造形によって表象世界の意味を問いかける作品を多く残したアーティスト荒川修作とそのパートナーで詩人のマドリン・ギンズの30数年以上に及ぶ構想が実現されている。 普通に、普通の場所で生活していると、自分の五感から入ってくる印象について疑問を持ったり、異常を感じたりすることは滅多にないが、この世界に入ると、五感というものとそれを意味に変換する脳の作用というものが、じつはいかに頼りないものかがわかる。あんまり没入しすぎると、オートバイの運転に支障を来すかもしれないので、ほどほどに。 ツーリングマップル索引➡中部北陸38A-6/関西68A-6

9つのパビリオンが点在し、148もの曲がりくねった回遊路、大小さまざまな5つの日本列島などがつくられている不思議な空間の「楕円形のフィールド」

4.時国家(本家上時国家)【北前船で栄えた往時の能登の風情に触れよう】


はじめて能登を旅したのは、もう40年以上前になる。関東の育ちなので、能登というとなんだかとても僻遠の地という印象しかなく、どんな場所なのかまったく想像がつかなかった。今では高速道路網が発達して、奥能登のほうまでアクセスが容易になったけれど、当時はずっと細い一般道を行くしかなく、奥能登についたときには、隔絶された辺鄙なところに来てしまったという印象だった。 一方、そんな田舎なのに、昔ながらの大きな屋敷が忽然と現れたりして、いったいなんだろうと、面食らった。時国家もそんな大屋敷の一つ。上下の二家に分かれているが、どちらも豪壮な屋敷で、見学できる。 どうしてこんな屋敷があるかというと、能登が北前船の中継基地だったという歴史があるから。また、加賀藩という大藩が輪島塗などの地場産業の育成につとめ、それが大きな富をもたらしたこともある。 山奥で、豊かな暮らしが営まれていた往時をリアルに感じられる。

入母屋萱ぶきの巨大な古民家(引用:まっぷるトラベルガイド)

5.ヤマハ発動機 コミュニケーションプラザ(静岡県)【二輪ファンなら誰でも楽しめるアトラクション充実】


ライダーには説明の必要はないだろう。静岡県といえば、四大オートバイメーカーのうちの三社発祥の地。当然、その歴史を物語るミュージアムもそれぞれある。たぶん、愛車のメーカーのミュージアムがいちばん気になると思うが、ご当地にあってもっとも楽しめるミュージアムとして、ヤマハコミュニケーション・プラザを挙げておきたい。 歴代の市販車はもちろん、時代を飾ったレーサーも勢ぞろいし、長年トヨタのスポーツモデルのエンジンのディストリビューターでもあるだけに、2000GTやレクサスLFAなどの4輪の傑作も拝める。さらには、様々な趣向を凝らしたイベントが頻繁に開かれている。スケジュールを調べて、一日楽しみにでかけてみよう。

ヤマハオーナーではなくとも、モーターサイクルファンなら一度は訪れてみよう(引用:まっぷるトラベルガイド)