2019.08.14

『テルマエ・ロマエ』の温泉 ー「勝手にセレクト!極私的テーマ別温泉」by 滝野沢優子 vol.01

国内外問わず、さまざまな温泉をまわっている滝野沢優子さん(ツーリングマップル関西担当)による、「テーマ別おすすめ温泉」紹介。映画の舞台やモデルになった温泉から、特殊な立地や外観を持った温泉など、様々なテーマに応じた温泉が登場!温泉ソムリエの資格も持つ滝野沢さんのおススメを参考に、温泉ツーリングに出かけてみては!?

著・滝野沢優子

第1回 『テルマエ・ロマエ』の舞台となった温泉


「テルマエ・ロマエ」ご存知でしょうか? ヤマザキマリ原作で大ヒットした温泉コメディ漫画です。 古代ローマの浴場設計技師ルシウスが、現代の日本と古代ローマをタイムスリップで行き来しながら、「平たい顔族」(=日本人)の入浴文化を古代ローマの浴場設計に活かしていくというようなお話ですが、ルシウスの大真面目なリアクションがとにかくおかしくて笑えます。 古代ローマと日本の温泉文化もよくわかる内容で、温泉ファンでもそうじゃなくても楽しめる話になっていますよ。 漫画のヒットを受けて映画化もされました。主人公ルシウスには阿部寛、ハドリアヌス帝に市村正親、そのほかの古代ローマ人に北村一樹、宍戸開など、濃い顔キャラがこれでもかと共演(笑)。そしてヒロインは上戸彩。漫画原作には出てこないオリジナルキャラで、一作目では漫画家志望、2作目では風呂専門ライターという設定でした。 原作でのヒロイン「小達さつき」は東大大学院卒の古代ローマ史研究家。ラテン語にも堪能という才媛なのですが、映画的にはもっと緩いキャラがよかったのか?上戸彩ではイメージが合わないからか(失礼!)?いずれにしても、上戸彩を無理やりにでも使いたかったんだろうなあ、という感じがありあり。 まあ、どうでもいいんですが。詳しくは漫画、映画を見てくださいね。 さて、今回はその漫画・映画「テルマエ・ロマエ」に登場する日本の温泉地・温泉宿から3カ所をピックアップしてみましたよ。

●伊東温泉「東海館」(静岡県)


映画には使われませんでしたが、漫画の中ではヒロインの実家の温泉旅館(「伊藤温泉・東林館」となってます)として登場、法被を着たルシウスが従業員として働いていました。 威風堂々とした唐破風(からはふ)の玄関を持つ木造3階建ての建物で、国の登録有形文化財に指定されています。昭和3年に創業した老舗の温泉旅館で、平成9年までは営業していました。その後伊東市に寄贈され、平成13年に観光施設として一般公開されました。 和風建築の粋を凝らした見事な館内は必見です。総タイル貼りの浴室も健在で、土・日曜、祝日は日帰り入浴も可能なので、ぜひ掛け流しの湯を堪能してください。最上階の望楼からは松川越しに伊東の街並みが一望できます。 また、隣接する「(旧)旅館いな葉」も、同様に登録有形文化財の木造建築物で、現在は「ケイズハウス伊東温泉」というゲストハウスになっています。高級旅館だった館内の設備はそのままに、ドミトリー2950円という低価格で宿泊できるのがうれしいです。個室もあります。自炊設備もあり外国人に人気の宿になっています。こちらは平日でも日帰り入浴OKですよ。

建築を見るだけでも行く価値があるけど、どうせなら入浴したい!

●北温泉旅館(栃木県)


那須岳の麓に湧く一軒宿の秘湯で、映画の中ではヒロイン上戸彩の実家「山越屋旅館」として登場しています。駐車場から歩くこと10分、目の前に黒い木造3階建ての威風堂々とした建物が現れます。奥が江戸、左が明治、右が昭和の建築で、迷路状になった館内のあちこちに、奇怪なオブジェや怪しい神仏が祀られた不思議ワールドです。 ここの名物は「天狗の湯」。ランプのほのかな灯りのもと、2つの大きな天狗の面が睨みを利かす湯船。存在感が半端ありません。ただし混浴でタオル巻NG、湯船は廊下から丸見え。脱衣所も1か所だし湯も透明なので、女性にはハードルが高いうえ、日帰り入浴時間は男性専用なのです。なんとかしてほしいところです。 そのほか、女性専用内湯「芽の湯」、男女別露天風呂「河原の湯」、湯小屋風の「相の湯」と温泉プールの「泳ぎ場」があり、単純泉、弱食塩泉、鉄泉と3種類の泉質も楽しめます。宿泊料金も高くないうえ、自炊宿泊もできます。館内には猫も2匹ウロウロしていて猫好きにもうれしい宿ですよ。

天狗に睨まれながらの入浴はココじゃなければ体験できない!?

●伊香保温泉(群馬県)


榛名山の中腹にある温泉地で、傾斜地を利用した365段の石段がシンボルになっています。石段の両側には温泉まんじゅう店や土産物屋、射的や輪投げ、弓などの遊技場が並び、浴衣の似合う情緒あふれる温泉街は、日本を代表する温泉地の風景のひとつといえましょう。 映画の中では、バナナを奪った猿を、弓矢を持ったルシウスが追いかけるシーンなどが、ここで撮影されました。 共同湯もいくつかあり、石段上には伊香保神社と「伊香保露天風呂」、下には「石段の湯」、中ほどには無料の足湯があります。 泉質は、茶色く濁った「黄金の湯」、メタ珪酸が豊富な単純泉「白銀の湯」の2つがあり、石段上に湧く黄金の湯は、石段の傾斜を利用して各宿に引き湯されています。その途中にある4カ所の「小間口(こまぐち)」にもぜひ注目を。源泉が流れる様子がよくわかります。 戦国時代には石段も温泉街もすでに形成されていたという古い歴史を誇り、当時からこの配湯システムが使われていたそうです。茶色い皮の「温泉まんじゅう」も、ここ伊香保温泉が発祥とされています。

伊香保温泉の石段。途中には足湯があり、源泉が流れる小間口も

ここにあげた3つのほかにも、 ・ルシウスが初めて現代日本にタイムスリップし、「ケロリン桶」に驚くシーンが撮影された銭湯「稲荷湯」(東京都北区) ・山越屋旅館の露天風呂として登場する「大滝温泉天城荘」(静岡県) ・大露天風呂が外国人にも大人気の「宝川温泉 汪泉閣」(群馬県)なども気になります。 (※以下結末のネタバレ含みますので、知りたくない方は読まれないようにお願いします…) 「テルマエ・ロマエ」の漫画では、ヒロインが古代ローマにタイムスリップしてルシウスと結婚、子供を産んでハッピーエンドで終わっていますが、続編が出ないかなあと大いに期待している私です。 (続く) ※当記事はツーリングマップル週刊メルマガにて2017年11月~2018年1月に配信した記事を再編集したものです。施設情報は変更されている可能性がありますので、訪問する際は事前にご確認ください。