
Report
2021.03.08
「2021年度版の取材を振り返って」Vol.2~東北編~
「2021年版の取材を振り返って」をテーマに、各著者が感じたことについて語ってもらうシリーズの第2回です。ツーリングマップル東北の表紙撮影2日目と3日目、そして取材を通しての話しです。
表紙撮影2日目
「表紙撮影」の第2日目もドラマの連続。Vストローム250に乗る渡辺哲さんも、途中まで同行してくれた。 奥羽山脈の峠越え。国道113号の二井宿峠、羽州街道の金山峠と、宮城・山形県境の峠を越え、山形県の上山温泉から蔵王エコーラインを上っていく。すると辺り一面が霧に覆われていた。山形・宮城県境の刈田峠では2、3メートル先も見えなかった。視界ゼロの濃霧の中で、賀曽利は喜んだ。 「巣山さん、これだけの濃霧は、そうそう経験できないですよ」 と言って、巣山カメラマンに何カットもの写真を撮ってもらった。巣山さんも本気で、表紙候補の写真を撮るような勢いだ。「この濃霧の刈田峠の写真、表紙にならないかなあ。いままでにない斬新な『ツーリングマップル』の表紙になると思うのだけど」と、冗談を言い合うカソリ&巣山だ。(編注:これまで雨や霧の写真が表紙になったことはない) 蔵王エコーラインの刈田峠を越え、宮城県側に下っていくと濃霧は消え、青空が広がった。今度は本当の表紙候補の撮影になった。巣山カメラマンはここでは、走りのシーンを何枚も撮った。 国道286号の笹谷峠は通行止で、通り抜けはできないとの表示があった。これを見たら、普通は並走する山形道で迂回しようと思うだろう。ところがカソリ&巣山のこういう時のやり方は違うのだ。その通行止地点まで行って、そこでダメならが引き返すということをいつもやっている。 今回もその慣例に従い、宮城県側から笹谷峠を上っていった。山々を覆いつくす東北の緑が目にしみる。宮城県側の峠道はまったく問題なく走れた。宮城・山形県境の笹谷峠に到着。巣山カメラマンは笹谷峠の絶景を撮ることができた。笹谷峠の山形県側は通行止で、来た道を引き返す。笹谷ICで山形道に入ると、1区間を走って関沢ICで降り、山形へと下った。 国道13号に出ると、天童の食堂「茂利多屋」で昼食。「冷たいキムチラーメン」を食べた。食べ終わったところで、渡辺さんと別れた。

刈田峠は数メートル先も見えない濃霧だった
巣山カメラマンとの「表紙撮影」は続く。奥羽山脈の鍋越峠、中山峠(国道47号)を越え、2日目の最後は宮城・秋田県境の鬼首峠だ。旧道は通行止なので、新道の仙秋鬼首トンネルで峠を越えた。長大なトンネルを走り抜けて秋田県側に入ると、空が抜け落ちんばかりの豪雨。刈田峠の視界ゼロの中でも写真を撮った巣山カメラマンは、ここでも豪雨の鬼首峠をしっかりと撮影する。 このように奥羽山脈の峠越えでは、峠を境にしての劇的な変わり方が見られる。太平洋側の奥州と、日本海側の羽州、「奥羽」の違いを見られるのは、東北ツーリングの大きな魅力だ。 すさまじいばかりの豪雨にたまらず、まずは鬼首峠を下ったところにある一軒宿の宝寿温泉に行った。しかし残念ながら泊まれなかった。続いて秋ノ宮温泉郷の日帰り湯「秋ノ宮山荘」へ。ここで温泉に入って一息入れようとしたのだ。ラッキーなことに「秋ノ宮山荘」は宿泊可で、しかも飛び込みで行ったのにもかかわらず、泊まることができた。これは神のご加護か。

宮城・秋田県境の鬼首(おにこうべ)峠。秋田側で豪雨に見舞われる

2日目の宿は秋ノ宮温泉郷の「秋ノ宮山荘」
表紙撮影3日目
「表紙撮影」の第3日目は強行軍。奥羽山脈の峠を越えながら、なんとしても青森まで行きたかったからだ。こういう時の巣山カメラマンは平気な顔をして、「やりましょう!」と言ってくれる。ということで「秋の宮山荘」の出発は5時前。秋田・岩手県境の大森峠、巣郷峠、仙岩峠と越えていく。 仙岩峠の「峠の茶屋」で食べた「おでん」と、小岩井農場で食べた「ソフトクリーム」は忘れられない味。見返峠から見た「岩手富士」の岩手山は目に残る風景だ。国道103号で発荷峠を越え、最後に八甲田の傘松峠を越えた。青森駅前に到着したのは19時30分。 第3日目は秋ノ宮温泉郷から青森駅前まで514キロを走った。巣山カメラマンは膨大な枚数の写真を撮りながらこの距離を走ったのである。巣山カメラマンのさらに凄いのは、このあとにとった行動だ。青森駅前で青森到着のシーンを撮り終えると、何と東北道で東京に戻るという。ぼくはもうヘロヘロメロメロ状態だったので、信じられなかった。 で、カソリはといえば、走り去っていく巣山さんを見送ると、青森駅前の我が定宿「東横イン」に行った。すると、満室で泊まれなかった。それではと同じ青森駅前の「ルートイン」に行くと、部屋は空いていた。コンビニで「おにぎり」と「どら焼き」を買い、部屋で食べ終わると、その瞬間にバタンキューの爆睡。巣山さん、ゴメンね、カソリはさっさと寝てしまいましたよ。

東成瀬村の鳴瀬川でのワンカット。巣山カメラマン、渾身の一枚だ

岩手・秋田県境の巣郷峠(東北56D-1)

小岩井農場の「小岩井農場ソフトクリーム」で元気をチャージ!

発荷峠を走る、眼下には十和田湖。巣山カメラマンは展望台から撮影している

青森駅でロングランだった長い一日が無事終了
取材全体を振りかえって
『ツーリングマップル東北』2021年度版の東北実走取材は、太平洋岸を走る「鵜ノ子岬(福島)→尻屋崎(青森)」を皮切りにして、いくつかのテーマを設けて東北を駆けめぐった。その中でも「奥羽山脈の峠越え」と「東北一周」は2本の柱になった。 阿武隈川・北上川の「東北二大大河紀行」、「混浴温泉めぐり」、「林道走破行」、「白河探訪」といったテーマで東北を駆けまわった。「奥羽山脈の峠越え」は巣山カメラマンと別れたあと、「青森→白河」の復路でも峠を越え、全部で32峠を越えた。阿武隈川は源流から河口へ、北上川は河口から源流へと、東北の二大大河を追った。

「東北一周2020」の出発点は鵜ノ子岬(東北5F-6)

JR五能線「木造駅」(東北93F-2)の巨大な土偶

阿武隈川の名瀑、乙字ヶ滝(東北9F-1)

白河駅北側の小峰城(東北9A-5)

奥会津の七ヶ岳林道(東北7H-4)
また、今回力を入れたのは「食」。2021年度版の実走取材中に食べた全食事の中から77食を選び、その中からさらに10食を選び抜いたものが『ツーリングマップル東北』2021年度版』の「ツーリングめし」に載せていますので、ぜひとも見てください。
【取材・撮影協力】
車輌:Vストローム250ABS(スズキ) ヘルメット:ツアークロス3 デパーチャー(アライヘルメット) ウェア:ツーリングマスタージャケット/ツーリングマスターパンツ(風間深志事務所) 靴:フラミンゴRIN-001(ワイルドウィング)