
Touring
2025.03.28
2025春の中部北陸おすすめツーリングコース【1泊2日編】
もうすぐ春ですね。冬の間は乗れなかったけれど、そろそろオートバイで出られるかなとソワソワ、ワクワクしていませんか?そこで、今年のツーリングシーズンスタートにおすすめの「春を感じられる」コースを、ツーリングマップル 各エリア取材担当者から紹介していただきます。 今回は中部北陸の「2025春のおすすめルート」1泊2日編です。
「若狭湾周遊」コース
奈良・東大寺では毎年3月に「お水取り」という儀式があります。十一面観音菩薩に日頃の罪過を懺悔(さんげ)し、五穀豊穣・除災招福を祈る法要です。実はそのときに使われる「お水」は若狭から送られるものであり、若狭には「お水取り」と対を成す「お水送り」という神事があるのですが、それはあまり知られていません。私は2004年から15年間、この神事に焦点を当てたツアーを実施し、若狭に伝わる不思議な不老不死伝説にまつわる場所を巡ってきました。しかし、この地にはまだまだ興味深い伝説や神話が数多く眠っています。 若狭湾の透き通った海と、気の遠くなるほどの年月をかけて作られた複雑な地形。その風景は神々しさを感じさせますが、古代の人々がこれを「常世」のように思えたのも納得できます。そんな地に、海を隔てた朝鮮半島や中国沿岸からやってきた渡来民が定住し、初期の仏教文化を築き上げ、道教思想をもたらしました。「お水送り=お水取り」のような独特の風習もその中で生み出されました。 大和朝廷成立後、若狭は「御食国(みけつくに)」と呼ばれるようになりました。日本神話では伊勢外宮に祀られる豊受神(とようけのかみ)が、若狭から伊勢へ鎮座し、内宮の天照大神の食事を司る女神とされたとありますが、このことからも、この土地がいかに豊かであったかがうかがえます。 3月2日の「お水送り」が済むと、三方五湖周辺の梅林は一斉に咲き誇り、春の訪れを告げます。そして季節が進むにつれ、海の青さと新緑のコントラストがますます鮮やかになっていきます。春から初夏にかけての若狭を、ぜひ目と舌で存分に味わってみてはいかがでしょうか。

若狭に春を呼ぶ「お水送り」神事。3月2日の夜、鵜の瀬から送られた聖水は、10日かけて奈良、東大寺二月堂下の若狭井に湧き出るとされる。その「若水」を汲んで、二月堂の本尊である十一面観音に捧げるのが「お水取り」神事。お水取りとお水送りが終わると、若狭と奈良に本格的な春が訪れる

若狭は海だけでなく三方五湖や湾を取り巻く山々もあり、四季を通じて様々な表情を見せてくれる。「御食国(みけつくに)」といわれたように、その豊かな自然がもたらす食も魅力
コース概要
START:北陸自動車道「敦賀IC」 ➡ツーリングマップル中部北陸 P.47 L-2/関西 P.77 L-2 GOAL:舞鶴若狭自動車道「小浜IC」 ➡ツーリングマップル中部北陸 P.47 C-7/関西 P.77 L-2 江戸時代には北前船で賑わい、その後、大陸との航路も開かれた敦賀は、赤レンガ倉庫などが残り、エキゾチックな雰囲気があふれる街です。北陸新幹線が敦賀まで延伸したことで、駅周辺は整備されて街歩きも楽しくなりました。敦賀の街を起点に、湾沿いに敦賀半島を巡り、若狭美浜へ。風光明媚な道を辿っていきましょう。 しばらく白砂の浜が続くと、三方五湖のエリアに入ります。その名のとおり、五つの湖があり、それぞれが塩水湖、汽水湖、淡水湖と塩分濃度の違う湖で、その色や生育する魚類、植生が異なります。それぞれの湖を巡り、さらに、静かに湖を巡る電池推進遊覧船に乗り、湖上からの風景を楽しむのもおすすめ。 湖巡りの後は、近年無料開放された三方五湖レインボーラインでワインディングを楽しもう。そして、常神半島の突端まで往復して、1日目は終了。宿で若狭の海の幸を堪能しましょう。 2日目は、宿を起点に、若狭に残る伝説巡り。空海伝説の残る三方石観世音(みかたいしかんぜおん)、小浜への途中の日本でも有数の湧水量を誇る瓜割の滝、若狭一宮の若狭姫神社・若狭彦神社、神宮寺、そして「お水送り」神事が行われる鵜の瀬、さらに、小浜では、八百比丘尼(やおびくに)伝説ゆかりの空印寺など、見どころがたくさんあります。最後は、エンゼルラインを辿って、二日にわたって辿ってきた若狭湾の絶景を一望に。

1.町並みも風景も異国的な敦賀半島を皮切りに、潮風を切って進む
古代から大陸や朝鮮半島との縁が深い敦賀は、独特の雰囲気を持っています。まずは町並み散策から、絶景の敦賀半島へ。白砂青松の砂浜と抜けるようなあおさの海のコントラスト、そして吹き渡る潮風が清々しいクルージングコースです。

異国情緒漂う赤レンガ倉庫前[ツーリングマップル中部北陸 P.108 C-5/関西 P.99 C-5]でなごむ。恐竜王国福井では、あちこちに恐竜人間が

まさに白砂青松が広がる気比(けひ)の松原[ツーリングマップル中部北陸 P.108 B-6/関西 P.99 B-6]。小春日和の昼寝が気持ちいい

気比の松原の傍らにある水戸烈士の墓と記念碑。幕末の残酷な歴史がここに刻まれている

敦賀半島の突端から「日本のハワイ」と称される水島を遠望
2022年にレインボーラインが無料開放されて、敦賀から三方五湖方面へ、ワインディングを楽しみながら最短ルートで行きやすくなりました。頂上公園からの三方五湖の眺めは最高です。

敦賀半島を横切り、西側の水晶浜[ツーリングマップル中部北陸 P.47 I-1/関西 P.77 I-1]へ

「道の駅若狭美浜はまびより」[ツーリングマップル中部北陸 P.47 H-3/関西 P.77 H-3]に寄り道して、若狭名物の焼鯖定食ランチ

レインボーライン頂上駐車場から三方五湖を望む
途中、三方五湖を周遊する電動遊覧船に乗って、水の上から若狭の自然を眺めるのも一興です。

電池推進遊覧船は美浜町レイクセンター[ツーリングマップル中部北陸 P.47 G-3/関西 P.77 G-3]から出航

三方五湖を巡る電池推進遊覧船のCOOT(クート)

初日は時間に余裕を持って宿にチェックイン。湖上館パムコで若狭の海の幸を堪能
2.伝説と神話を訪ねて
大陸や朝鮮半島との関わりが深い若狭は、神話や伝説も独特な雰囲気を秘めています。とくに、若狭には「不老不死」という道教の色合いの濃いエピソードが散りばめられています。

湖上館パムコの客室から望む「水月湖」の夜明け

空海伝説が伝わる「三方石観世音」(みかたいしかんぜおん)[ツーリングマップル中部北陸 P.47 G-5/関西 P.77 G-5]

四肢の障害にご利益があるとして、全国から参拝者が訪れる

三方五湖はうなぎでも有名。若狭町の「徳右衛門」[ツーリングマップル中部北陸 P.47 G-5/関西 P.77 G-5]がおすすめ
海からやってきた若狭創世神である若狭彦・若狭姫は時を経ても少年少女のままだったと伝わっています。


白山を開いた泰澄が見つけたとされる霊泉「瓜割の滝」[ツーリングマップル中部北陸 P.36 E-1/関西 P.66 E-1]。真夏でも涼しい聖地

若狭一宮の若狭姫神社[ツーリングマップル中部北陸 P.47 C-7/関西 P.77 C-7]
人魚の肉を食べて不老不死となってしまった八百比丘尼(やおびくに)。
そして、空海や泰澄といったマジカルな僧の足跡が残っています。
レインボーラインとともに、このコースの走りのハイライトともいえるのが、エンゼルライン。その頂上からは、辿ってきた常神半島と、その先の越前岬まで一望できます。
6.宿泊情報
最後に宿泊情報です。若狭の自然と伝承を巡るツーリングルート。一泊してゆっくりのんびり春を味わってみてはいかがでしょうか。 【湖上館パムコ】 三方五湖の一つ水月湖の辺に位置する宿。宿独自のアウトドアアクティビティプログラムをたくさん用意している。独自のクラフトビールと料理も評判 ツーリングマップル➡ツーリングマップル中部北陸 P.47 E-4/関西 P.77 E-4

アウトドアアクティビティの拠点でもある宿本館。ツーリングイベント「若狭湾風遊騎」も主催

鉄人賀曽利とパムコスタッフ。アットホームで元気いっぱい
【民宿だいらや】 常神半島の海辺にある老舗民宿。かつて京都の奥座敷と呼ばれて賑わった頃の雰囲気を残す。なんといっても、料理が最高

眼の前の若狭湾の波音が心地良い。古き良き民宿の雰囲気に心がなごむ(画像引用:民宿だいらや)