2025.10.02

賀曽利隆と走る!アフリカ大陸縦断ツーリング2013 vol.1

いよいよ2025年10月5日より、ツーリングマップル東北担当カソリさんのアフリカツアー(by道祖神)が始まります。 35日間にわたる今回のアフリカ縦断、どんな旅になるんだろう?と気になる方も多いと思います。その旅の顛末は、カソリさんが帰国したらYouTube「カソリにきけ」やイベントなどで根掘り葉掘り聞いてみなさまにもお伝えしたいと思っています。で!今回はその参考に、2013年に行われた旅行会社道祖神さんの「賀曽利隆と走る!」ツアーのアフリカ縦断を、カソリさん自身の視点で語った記事を、こちらに掲載させていただきます。 (編集部で一部加筆修正)

著・賀曽利隆

いざアフリカ縦断出発!


2013年12月18日、いよいよ「アフリカ大陸縦断」出発の朝を迎えた。前日に到着したケニアの首都ナイロビで泊まったのは「オソイタロッジ」。コーンフレーク、クレープ、目玉焼き、ベーコン、ソーセージといった朝食を食べて出発する。 今回の「アフリカ大陸縦断」(ナイロビ→ケープタウン編)は旅行社「道祖神」のバイクツアー企画。「賀曽利隆と走る!」シリーズの第18弾目だ。記念すべき第1弾は、1993年の「目指せエアーズロック!(※いまはウルルと呼ぶが、当時はまだエアーズロックという名が主流だった)」。ブリスベーン→ケアンズの3739キロを15名で走破した。その後も世界各地をたくさんのライダーとともに走り回り、今回でついに18弾となった。 さて、この旅の我が相棒はスズキの400ccバイク、DR-Z400Sだ。相棒にまたがり、バイクツアー参加者11名のみなさんと一緒に走り出す。メンバーの最年長は70歳の榛澤さん。バイクはヤマハ・セロー。榛澤さんとは「南米・アンデス縦断」も一緒に走ったが、このセローはそのときと同じものだ。

ツアー参加者のみなさんと。ナイロビの「オソイタロッジ」を出発

こちらがこの旅の我が相棒、スズキDR-Z400S

最初の国境越え!


ナイロビから170キロを走り、ケニア・タンザニア国境のナマンガを越え、2番目の国、タンザニアに入った。前方には標高4556メートルの「メルー山」が大きく見えてくる。そのままナマンガの国境から100キロを行くと、メルー山麓の町、アルーシャに到着した。 町中を走り抜け、郊外の「ンドロ・ロッジ&キャンプサイト」へ。ここが我々の第1夜目の宿泊地だ。街道から500メートルほど入ったところにあるキャンプサイトで、きれいに刈られた草の上にテントを張った。寝床を確保したら場内のバーに行く。まずはメンバーのみなさんと冷えたビールで乾杯だ。ビールは「タスカー」。1本3000シリングで、日本円にすると約180円(※2013年当時)。夕食はキャンプ場内のレストランで「チキン&ライス」を食べた。 タンザニアのライスはうまいのだ。このキャンプ場の周辺は、一面の水田になっている。農民たちは稲穂を刈り取り、ビニールシートの上で穂を落とし、それを袋に詰めていた。

タンザニアに入り、アカシアの木を見ながら小休止

メルー山麓の水田地帯では、稲の収穫の最中だ

キリマンジャロ、バオバブ…アフリカを代表する景色たち


翌日は、夜明けとともに起きた。天気は快晴。目の前のメルー山には、まったく雲がかかっていない。右手に見えるアフリカ大陸最高峰のキリマンジャロにも雲はかかっていない。西の空には十六夜の大きな月が残っていた。素晴らしい。 キャンプ場内のレストランで朝食を食べて、いざ出発。メンバー全員で「目指せ、ケープタウン!」と叫んで走り出す。キリマンジャロが、大きく見えてくる。青空を背にしたキリマンジャロの雪がまぶしいほどに光り輝いている。キリマンジャロ山麓の町「モシ」からは、タンザニアの首都ダルエスサラームに通じる幹線国道を行く。大型トラックや長距離バスなど交通量は多い。 そしてこのあたりからアフリカのシンボル、バオバブの木をよく目にするようになる。国道沿いのバオバブの大木の下にバイクを止めて小休止することにした。それを見て近くの村から、子供たちが「ワーッ!」と歓声を上げて集まってきた。我々のバイクは大人気だ。

アフリカ大陸最高峰のキリマンジャロが見えている

バオバブの木の下で。我らの紅一点、平本さんは大モテだ

ザ・アフリカ食


「モシ」から380キロほど走ると、タンザニアの首都ダルエスサラームとザンビアの首都ルサカを結ぶ国道1号に出る。チャリンゼの交差点を右折して走り、モロゴロへ到着。 宿泊は街道沿いのホテル。夕食は「ウガリ・ナ・セマキ」だ。「ウガリ」はスワヒリ語で、トウモロコシの粉を熱湯で練り固めて餅状にしたもの。ケニアやタンザニアの主食になっている。「セマキ」はスワヒリ語で魚のこと。皿にはウガリと焼き魚が1匹のっていて、それに汁がついている。ウガリを手でつかみ、丸めて汁をつけて食べるのだが、これがアフリカの食の基本。西アフリカのサバンナ地帯では雑穀を粉にし、同じようにして食べる。同じく西アフリカでも熱帯雨林地帯では、タロイモやヤムイモ、キャッサバなどのイモ類やプランタイン(料理用バナナ)を煮たて、それを臼で搗(つ)いてやはり同じような餅状にして食べる。

チャリンゼのT字路に到着。ここを右折してモロゴロへ

夕食の「ウガリ・ナ・セマキ」。これぞアフリカの食文化

野生動物に出会える!これぞアフリカ


モロゴロから50キロほど走ると「ミクミ・ナショナルパーク」に入る。東アフリカのナショナルパークはどこも2輪は通行禁止だが、ミクミ・ナショナルパークのように幹線道路が通ってるところは自由に走れるし、入園料は取られない。 ここでは、キリンやシマウマ、バッファロー、インパラ、トムソンガゼルなど、次々に野生動物を見た。キリンの群れと出会ったときは、思わずDR-Z400Sを止めて見入ってしまった。

ミクニ・ナショナルパークでキリンの群れに見入る

現地ドライバーに負けてたまるか


タンザニア中部のイリンガを通り、南西へ進むとタンザニア・ザンビア・マラウィ国境のムベヤの町へ。2車線のハイウエイを100キロ超で走る。大型バスや大型トラックも100キロ前後で疾走する。恐いのは対向の大型バスの無理な追い越しだ。 我が愛車のDR-Z400Sが相当、接近しているというのに、大型バスは強引に追い越しをかけてくるのだ。衝突を避けるために速度を落として路肩に逃げたが、それがたび重なるとだんだん腹がたってくる。「よーし!」とばかりに、対向の大型バスが無理な追い越しをかけてきたときは最後の最後まで速度も落とさず、逃げることもしないで走りつづけた。大型バスは「ブブブブーーーー」とクラクションを鳴らしつづける。最後の瞬間で左に避けたが、大型バスの運転手は青い顔をしていた。

イリンガの「キンランザファーム・キャンプ場」に到着

国道1号を走るスカニアやDAFの大型トラック

アフリカにも茶畑がある


ムベアからは、ザンビア国境に通じる国道1号を離れてマラウィ国境へと向かう。高原地帯を縫って走る。 通り過ぎていく集落の周辺は一面のバナナ園が広がる。一方、丘陵地帯の斜面は一面の茶畑になっている。タンザニアはキリマンジャロ・コーヒーでよく知られているが、このように茶も栽培されているのだ。 ムベアから25キロ走るとマラウィ国境に到着。バイクを止めると、マネーチェンジャーたちが集まってきた。ここには両替所がないので、騙される危険を覚悟で替えてもらったが、幸いたいしたトラブルもなく、マラウィのお金のクワチャを手に入れた。

ムベア郊外の茶畑

国境のマネーチェンジャー。両替所はない

国境を越える楽しさ、おもしろさ


この旅での第3番目の国、マラウィに入ると、東アフリカの共通語のスワヒリ語はもうほとんど通用しなくなる(マラウィの国語はチェワ語。英語も公用語だが、地域によりたくさんの部族語が話される)。 国境の食堂で「シーマ」を食べたが、それは東アフリカの「ウガリ」とまったく同じもの。国境を越えるとこのように言葉が変わり、民族が変わるが、実は同じもの、変わらない文化もある。それらを見られるのが「国境越え」の最高のおもしろさといっていい。

タンザニア・マラウィ国境の食堂

「シーマ」を食べる。「ウガリ」と同じであることが分かるだろう

(次回へ続きます)

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