
Essay
2025.10.09
【バイクでアフリカ縦断】賀曽利隆が見た絶景と出会い|マラウィ〜ザンビア編(2013)
バイクでアフリカ大陸を南へ――。 ケニアから出発し、南アフリカ・ケープタウンへと駆け抜けた賀曽利隆のツーリング記録。 前回、ケニア・ナイロビを出発しタンザニアーマラウィ国境まで走りました。第2回はマラウィ~ザンビアへ。 大地溝帯の壮大な風景、マラウィ湖畔で見た夕日、そして現地でのトラブル、人々との出会い。 「走ること」そのものが人生になる瞬間を、写真とともに振り返ります。 (編集部で一部加筆修正)
前回はケニアからマラウィ国境へ(前回の旅の振り返り)

広大なアフリカ。ナイロビを出発し3日間で約1700kmを走った。

前回記事は下記リンクよりどうぞ
果てしないマラウィ湖と大地溝帯の風景 マラウィ湖畔のチティンバ・キャンプ場で過ごす夜
南北に細長い国、マラウィを南下する。この道は首都のリロングウェに通じる幹線道路で、2車線の舗装路なのだが交通量はきわめて少ない。タンザニアのように、大型トラックや大型バスと頻繁にすれ違うこともない。そのかわり自転車が多くなった。 右手に見える山並みはグレートリフトバレー(大地溝帯)の西縁。北は中東のヨルダン河谷から南はザンベジ河口までつづくグレートリフトバレーは世界最大の地溝帯だ。この先、何万年か何億年か知らないが、アフリカ大陸が2つに割れるときはこの線で割れるのは間違いない。左手にはマラウィ湖。南北の長さ580キロという世界第10位の大湖はグレートリフトバレー内にある。いまいるのが湖の北端。それにしても、とてつもない長さだ。日本にあてはめれば「東京から大阪までが湖」ということになる。 行けども行けども尽きないマラウィ湖を見つづけながら、相棒のDR-Z400Sを走らせた。マラウィでの第1夜目はそんなマラウィ湖畔でのキャンプだ。「チティンバ・キャンプ場」のテントサイトはきれいな芝生になっている。湖畔にはファイヤー・プレースもある。さっそく焚き木を集めて焚火した。とても大きな夕日がマラウィ湖対岸の、タンザニアの山々に落ちていく。夕食はキャンプ場内のレストランで。まずはマラウィ産のビール「クチェクチェ」で乾杯。そのあとライス&ビーフの夕食を食べた。

南北に長いマラウィと、マラウィ湖

マラウィ湖畔の「チティンバ・キャンプ場」に到着

マラウィ湖に落ちる夕日
アフリカでも速度違反(泣)。現地の人の温かさ、港町ンカタベイでの出会い
翌日もマラウィを南下する。ところが中部のムズズを過ぎたところで警官に止められた。「しまった!」と思ったときにはもう遅い。スピード違反で捕まったのだ。スピードガンでの計測。30キロオーバーの罰金は5000クワチャ(約1250円)。その場で払った。 マラウィ湖畔のンカタベイでは連泊した。驚いたことに、港には1000トン以上はありそうな大きな船が停泊していた。マラウィ湖の湖畔に造船所があるとも思えないので「いったい、どこから運び入れたのだろう」とメンバー全員で頭をひねったが分からずじまい。ここではひと晩、仲良くなったトーマスの家で泊めてもらった。星空の下、ランプの灯りでの夕食は忘れられない。シーマと肉汁を手づかみで食べるのだが、トーマスはぼくの方にそっと肉を多く入れてくれていた。

マラウィを南下する。「さー、行くぞ!」

マラウィ湖で湖水浴をする人たち

バイクを見に集まってくるマラウィの子供たち
大統領車列との遭遇、そしてザンビアへ
南部に入っていくと、交通量は少しは多くなった。首都のリロングウェに近いサリマでは大統領一行とすれ違った。警官が大勢出て、すべての交通を止める。その中を大統領一行の乗った何台もの車が猛スピードで走り抜けていく。どの車に大統領が乗っているのかはわからなかった。 サリマで長かったマラウィ湖畔を離れる。首都のリロングウェに向かっていくと交通量が一気に多くなった。ゆるやかな登り。バイクを止めると、我々は高台から雄大な風景を見下ろした。首都のリロングウェに到着するとファストフード店で昼食。ハンバーガーとフライドポテトを食べた。 リロングウェから130キロ走るとザンビア国境に到着。国境で両替をすると1USドルが5クワチャに。1ザンビア・クワチャは約20円だ。 国境近くの町、チパタで給油し、郊外の「ママルーラ・キャンプ場」に泊まった。テントを張り終えると、まずはキャンプ場内のバーでザンビア産ビールの「モシ」をキューッと飲み干す。1本10クワチャ(約200円)。そのあとキャンプ場内のレストランで夕食。イタリア料理の「ラザニア」を食べた。ザンビアの「辺境の地」といってもいいようなチパタのキャンプ場で食べる「ラザニア」の味は格別だ。翌朝は、キャンプ場内のマンゴーの木の枝に飛びつき、食べごろの実を取って、顔中をベトベトにしながらたてつづけに食べた。マンゴーはぼくの大好物なのだ。

マラウィの隣、ザンビア

マラウィの首都リロングウェからザンビア国境への道

チパタ郊外の「ママルーラ・キャンプ場」

「ママルーラ・キャンプ場」の「ラザニア」
But China is good country ♪
次の日はザンビアの首都ルサカに向かった。その途中、カチョローラ村の国道沿いにある「カチョローラ・キャンプ場」に泊まった。 ここではキャンプ場のオーナーのジョージと話した。朴訥とした感じがすごくいい。ジョージの話で忘れられないのは「メイドinチャイナ」だ。ザンビアにはものすごい勢いで中国製品が入り込んでいる。しかし「メイドinチャイナ」は衣類でも靴でも電器でも、何でもすぐにダメになるという。それに対して「メイドinジャパン」は丈夫で長持ちし、「フォーエバー(永遠)」だという。だがその後がいい。ジョージは「But China is good country(だけど中国はいい国だ)」という。ジョージの「But China is good country」は大うけで、その後、我々の流行語になった。

カチョローラ・キャンプ場からの眺め

ザンビアの首都ルサカに到着
声を失うビクトリア大滝 Victoria Falls Zambia
首都のルサカからはザンビア一番の幹線道路を南下し、サンビアージンバブエ国境のリビングストンに向かう。その間480キロ。 リビングストンの人口は10万人で、ザンビアでは3番目に大きな町。そこから国境までは10キロほど。ザンビアでの出国手続きを終えると、ザンベジ川にかかる橋を渡ってジンバブエに入る。いよいよ「アフリカ大陸縦断」のハイライト、世界最大の滝「ビクトリアフォールズ(ビクトリアの滝)」を見る時がやってきた。ゲートで入園料を払い、かわいらしい猿が群れる森を通り抜けると、目の前に巨大なビクトリアの滝が現れた。あまりのすごさにしばらくは声も出ない。 ザンビアとの国境を流れるアフリカ第4の大河、ザンベジ川が幅1700メートルにわたって118メートルの落差で落ちていく。大滝には虹が何本もかかっている。夕立のような水しぶきを浴びて体中が濡れるのも忘れ、茫然として大自然の驚異に見入った。大滝を目の前して「おー、これぞアフリカ!」と叫んでしまった。その夜はビクトリアの滝に近いキャンプ場で泊まったが、午前0時になると花火が打ち上げられ、町のあちこちから「ハピーニューイヤー!」の声が聞こえてくる。2013年から2014年に変わった。

街道沿いで小休止。近くの村人たちがやってくる

ザンベジ川にかかるザンビア・ジンバブエ国境のビクトリアフォールズ橋 Victoria Falls Bridge

世界最大のビクトリアの滝。「おー、これぞアフリカ!」

今回のルート(約1900km)
(次回へ続きます)