
Report
2021.04.01
「2021年版の取材を振り返って」Vol.9~中部北陸編~
「2021年版の取材を振り返って」をテーマに、各著者が感じたことについて語ってもらうシリーズの第9回。中部北陸担当の内田さんからの話です。
2020年の実走取材総括
2021年度版のツーリングマップルが発売になったけれど、昨年の今頃は、正直言って、21年度版は取材はできず、発売も無理だろうと思っていた。 例年なら、新年度版が発売になった直後にその年の編集会議が持たれるのだけれど、去年の3月は最初の緊急事態宣言が出された直後でもあり、それどころではなかった。 ずるずると予定が決まらないまま5月になり、そして6月になった。6月にはもう取材が始まっていなければならないのに、ようやくこの時点で編集会議となった。そして、ようやく動き始めることができたのが7月下旬だった。 このときもまだ全国的に緊張感が漂っていて、Gotoトラベル事業も東京が除外されていたために、どこへ行っても人影はまばらだった。そんな中、取材とはいえ、あちこち出歩いているのは、気が引けた。 そんなこともあって、取材の序盤はなるべく人に接しないように、自然豊かな辺鄙なところばかり選んで巡っていた。でも、逆にそういうところには三密を避けようとして人がやってきていて、はじめはキャンプの予定だったのに、キャンプ場に来てみると満員だったりして、すごすごと退散することが度々あった。
皮肉なもので、普段は人がごった返している観光地のほうが閑散としていて、ゴーストタウンのようだった。 不思議なことに、そんな観光地に足を踏み入れると、40年以上前のツーリングの光景が蘇ってきた。あの頃は、観光地といっても、今のように狂乱的な人混みなんてなくて、秘境的なところは、まさに秘境そのものの雰囲気が充満していた。例えば、白川郷とか五箇山の合掌造り集落なんて、よほど歴史や文化に興味のある人でなければ、そんなところがあるとも知らず、訪ねてみれば、地元の人しかいなくて、観光地的な雰囲気は皆無の異世界だった。 施設は充実して、観光地らしくなったけれど、人がいなければ、それだけでも昔の風情が戻ってくる。 そんな経験をした後では、逆に、人がいない観光地を今だからこそ巡ってみようという気になった。

表紙撮影は佐久平から八ヶ岳方面へ、途中の展望台から浅間方面を望む

八ヶ岳から諏訪に抜けてR152をひたすら南下していく

中央アルプスを望む絶景の展望台で休憩

雨に見舞われ観光農園で雨宿りさせてもらう

姫川を挟んで青鬼集落を遠望
Gotoトラベルに関しては、高級な施設ほどその恩恵を受けて、私たちがツーリングで使うような庶民的な宿は、逆にこの施策のせいで余計にひどい状態になっているのが目についた。 Gotoとその他のサービスを合わせると半額以下で泊まれるようになれば、普段は泊まれないような高級宿に泊まろうと思うのは人情だろう。そんなところにばかり人が流れて、例えば、普段4、5千円、あるいはそれ以下で泊まれるような宿は見向きもされない。そんなところは、諦めて休みにしているところも多かった。 新型コロナのパンデミックという異常事態にあるのだから、普段とは違うのは当たり前だけれど、異常さが歪つとでもいえばいいのか、施策の不自然さが身にしみるようだった。 そして、Gotoそのものが見切り発車だったところへ持ってきて、最大ユーザーである東京の住民にも解禁されると、それまで自粛逼塞させられていた反動で、どっと人が繰り出してきた。そのツケは、年末に見事に露呈したわけだけれど。 ※Go To トラベルキャンペーンが感染拡大にどの程度影響したかは現時点では定かではなく、見解の分かれるところです(編集部)

白馬・野平の一本桜の向こうに白馬三山が頭を出した

ライダー大歓迎を謳う能登半島

天竜川河口のダートをテネレで遊ぶ

笹ヶ峰牧場は真夏でも涼しい別天地

コロナ禍の中で、ふと心安らぐ光景に出くわした
総括というのも変だけれど、昨年の取材を振り返って思うのは、「おかしな年のおかしな取材だった」というに尽きる気がする。 と、まあ、ネガティヴな話ばかりでもつまらないから、次回は、昨年の取材で良かったことを紹介したいと思う。
【取材・撮影協力】
車輌:テネレ700ABS(ヤマハ発動機) ヘルメット:ツアークロス3ビジョン(アライヘルメット) ウェア・グローブ:コットンライダース/コットンカーゴパンツ/アーバンスタイルサマーグローブ(パワーエイジ) バッグほか:ムーンライトテント2型/ドライウエストバッグ/ドライダッフル(モンベル)