2021.05.21

「2021年版の取材を振り返って」Vol.14~北海道編~

「2021年版の取材を振り返って」をテーマに、各著者が感じたことについて語ってもらうシリーズは今回が最終回です。第14回も北海道担当の小原さんからのお話です。

著・小原信好

今回は「ツーリングマップル北海道」の表紙撮影の話。まず、北海道以外のエリアは、各地域の担当ライダーが表紙モデルとなっている。しかし北海道担当の自分は唯一フォトグラファーで、かつモデル体型では無いので、どうしても自分が撮影をしたい!で、近年は、ツーリングマップルの取材と編集にも携わっている、編集プロダクション「フィネス」の清水氏がモデルライダーをやってくれている。清水氏も髭があるので、表紙モデルライダーを私と間違える人がたまにいて、私に会うと、表紙に写っている人物と体系が違うので「随分と太ったのですね~」と言われることも多々ある(苦笑)

ところでどうやって取材&表紙撮影用バイクを決めているのか。 それは、事前に各地域の担当者から希望や意見を集め、さらにその年のメーカーのバランスなども考慮しながら車種が絞られ、徐々に決まっていく。北海道担当の私の場合は、足が悲劇的に短いので、足付き性が良好なバイクを優先してセレクトしている(涙)。今回の北海道版の第一候補はHONDA「CT125・ハンターカブ」であった。カブファンにとって伝説的なバイクである「CT110・ハンターカブ」の復刻版である。現代のデザインにリファインされた大人気モデル。 「広大な北海道の取材で使う車輌が125ccだと移動とかは大丈夫か?」 とは思ったものの、いや、北海道の風景には絶対合う!と確信し、是非とも!と希望していたのだが…。九州版に取られてしまった(泣)。 という事で、今回は、第二候補だったBMW「F900XR」を表紙モデルバイクに決定! 通常、取材&表紙撮影用バイクは、清水氏が運転して東京から北海道まで連れてきてくれる。合流したら表紙撮影をして、清水氏はバイクを置いて単身東京に戻る。置いていったバイクに今度は私が跨って、道内を取材し、バイクの返却日にあわせて、苫小牧港より大洗港にバイクを無人搬送し、メーカーに返却する。そんな流れである。(その逆パターンの場合もある)。

第一候補だったHONDA「CT125・ハンターカブ」

2021年度版の表紙撮影に使用したBMW「F900XR」

さて、表紙撮影場所の選定は、なるべく近年の撮影場所・地域と被らないようにしているのだが、最優先は天気!ドキュメンタリー的な企画ページでリアルなツーリングであれば、曇りや雨でも雰囲気があっていいのだが、表紙はなんとしても晴れの写真にしたい。 撮影時期は、9月に設定する場合が多い。北海道の9月は晴れる確率が高く、スッキリとした青空が期待できるからである。毎回、事前に天気予報をギリギリまでチェックして、もちろん、撮影車輌がオンロード、オフロード、どちらのタイプかによっても、撮影場所を考えている。 今回は集合場所を旭川市にして、晴れ予報だった美瑛周辺を巡ってから道北方面に行くことにした。実は2019年度版の撮影地も宗谷、礼文島と道北であったが天気が第一。こればかりは仕方がない。 快晴だった美瑛の丘での撮影を終えて、日本海へと向かい、海沿いを撮影しながら北上。夕暮れ前にサロベツ原野に到着。路面に映る影が随分と伸びている。逆光に照らされた海沿いの牧草ロールが綺麗だった。翌日の午前中に再度この場所を訪れたが、牧草ロールは撤去されていた。利尻島をバックに、表紙候補の写真が撮れると思っていたのだが無念だった。

観光地である美瑛町「セブンスターの木」(ツーリングマップル北海道69B-2)には、ほとんど観光客がいなくて、スムーズな撮影ができた

美瑛町のとある丘にて(ツーリングマップル北海道40E-6)。青と緑が美しかった!

夕暮れの豊富町「サロベツ原野」の牧草地(ツーリングマップル北海道56A-1)。翌日は牧草ロールが撤去されていた。景色との出会いも一期一会

撮影2日目の宿泊は、最北の稚内温泉郷にある「温泉民宿 北乃宿」(ツーリングマップル北海道65A-2)。酒の買い出しに宿の隣にある商店に行くと、ガラスのショーケースにさまざまな乗り物のフィギアが飾られていた。その中にゼロ戦のフィギュアもあった。実はゼロ戦好きな私は大興奮。その中に、コーヒー缶とコラボした映画『永遠の0』に登場する主人公が乗るゼロ戦のフィギュアもあった。 「お~~!いいな~~!国内各地のゼロ戦を見に行っているんですよ~。国内はあと2機です~」 なんて話をしていたら、店主から 「3機持っているから1機持って行っていいよ。好きな人が持っているほうがいいんだから」 とのひと言。何度か遠慮したが、結局、譲ってもらってしまった。お礼に今年も、この酒屋を尋ねるつもりだ。 撮影3日目の午前中も快晴! R版の表紙撮影地に選んだのが、「北防波堤ドーム」(ツーリングマップル北海道65B-3)。いつも、「ザ・北海道!」的な風景を意識して撮影しているのだが、今回は、歴史的にも非常に重要な場所をシンプルな構図にして、モデルバイクとバイクウェアやギアが映えるように撮影した。北海道らしさを感じない写真かもしれないがBMW「F900RX」の美しいスタリングを強調したアングルになったと思う。 今回の表紙撮影で一番のお気に入りカットは、稚内市「開基百年記念塔」(ツーリングマップル北海道65B-3)の海抜240mにある展望室からの撮影だ。まるでドローンで撮影したかのような浮遊感。天気が良くて利尻島までばっちりフレームに収まった。ドローン写真や映像は迫力があって、見る人を感動させるが、残念ながら同じ光景を自分の目で直接見ることはできない。私は、どうにかして、みんなが自分の目で見て、撮影ができる風景を探している。だからこのカットは長年、撮りたくて、ずっと待っていたもので、ようやく実現できた。

稚内市「北防波堤ドーム」(ツーリングマップル北海道65B-3)にて。このくらい引いたカットでも表紙写真には良かったのでは。と思っているが、ロゴや文字が入ると、バイクが小さくなるのでデザイン的にはどうだったのかな?

こちらが稚内市北方記念館・開基百年記念塔(ツーリングマップル北海道65B-3)。1階と2階は「北方記念館」。展望室は地上70mの高さに位置している

稚内市「開基百年記念塔」の展望室からガラスの映り込みを考慮しながらの撮影

豊富町「サロベツ原野」を走しる道道106号(ツーリングマップル北海道56B-2)。やっぱり凄い道だ!

表紙撮影最後の宿泊は、猿払村「笠井旅館」(58I-4)。「エサヌカ線ステッカー」や「エサヌカ線通行証明書」などを企画、販売している猿払村の人と語り合った。観光地が少ない村ではあるが、「絶景道」を町おこしのコンテンツとして活用しているのが素晴らしい。ホタテ漁で勢いのある村ではあるのだが、もっと何かをやっていきたいという若きパワーを感じた。 酒の席での話ではあったが、ツーリングマップル編集部、著者陣が勢揃いして、キャンプ場で「ツーリングマップル・フェス」を猿払村で開催したい!という話で盛り上がった。夢を語り合うのは楽しいもので、それがまた実現したら本当に幸せだ。そんな2020年9月の表紙撮影の3泊4日であった。さぁ、今年は、どこを撮影地にしようか。多分、道東方面かなぁ。それも結局は天気次第。そして、モデルバイクは何になるのか、自分も今から楽しみだ!

昭和の雰囲気を残す、猿払村「笠井旅館」(58I-4)は、実は釣り人が多く利用する宿で、ランチタイムメニューのカツ丼も密かに?人気なのだそう。今年は食べに行くぞ!

猿払村「道の駅・さるふつ公園」(ツーリングマップル北海道58J-4)で販売している「エサヌカステッカー」と「エサヌカ線通行証明書」。ステッカーは2021年バージョンのデザインになっている

さるふつ公園地下歩道のイルミネーション

【取材協力】


車輌:F900XR(BMW) ヘルメット:Z-7(SHOEI) ウェア・グローブ:アーバニズム×ノマディカ60/40マウンテンパーカー/メッシュベントパンツ/アーバンメッシュグローブ(urbanism)※撮影に使用したジャケットはサンプルです シューズ:RAN DRYSTAR SHOE(Alpinestars) バッグ:ミニフィールドシートバッグ(タナックス)

関連記事