2022.09.30

「キャンプツーリング入門」その1 by 内田一成

ツーリングマップル中部北陸版担当の内田一成さんによる、キャンプツーリングコラム。前回までは「キャンプツーリング徒然」と題して、内田さんの高校時代から現在に至るまでの、キャンプにまつわる様々なお話を聞かせていただきました。今回からは「キャンプツーリング入門」と趣向を変えて、これからキャンプツーリングを始める方に参考になるであろうお話を語って頂いています。ベテランの方もふんふんと言いながら読んでみてくださいませ。 ※当コラムは2015年にツーリングマップルメールマガジンで配信されたものを再編集したものです。記事中の情報等は当時のものになります。

著・内田一成

キャンプツーリングに必要なハードギアを揃えよう


(編注:当記事の初回配信は3月頃) まだまだ寒い日が続いていますが、着実に日は長くなってきて、梅をはじめ、春を彩る花もだいぶ開いてきました。そろそろツーリングの虫も疼きだす頃。春休みのツーリング計画を立て始めた方も多いのではないでしょうか。 ぼくがオートバイツーリングをはじめたのは35年以上前ですが、その頃はツーリングといえばイコールキャンプツーリングでした。現在のようにキャンプ用品が洗練されてコンパクトな時代ではなく、テントもシュラフもストーブも重くかさばるものばかりでした。そして、どこにでもコンビニがある時代でもなく、食料や水もけっこうな量を用意しておかねばならず、大荷物をリアキャリアに積んで移動していました。当時、北海道を旅するバックパッカーは、背中に大荷物を背負っているので「カニ族」なんて呼ばれたものでした。 ===================== (Wikipedia「カニ族」)1960年代当時、長期旅行や本格的登山に適する、大量に荷物の入る大きなリュックサックは、キスリング型リュックサックと呼ばれる横長のものしかなかった。これは幅が80cm程度あり、背負ったままでは列車の通路や出入り口は前向きに歩くことができず、カニのような横歩きを強いられたこと、またリュックサックを背負った後ろ姿がカニを思わせることから、この名が自然発生した。なお当初は「リュック族」と呼ばれていたが、1967年8月7日付けの朝日新聞で「カニ族」と紹介され、以後その呼称が定着した ===================== そんな装備が重くかさばっていた頃でも、自由な旅をするなら、やはりキャンプが一番でした。その日の気分で行き先を決めて、途中で気が変われば目的地を変更し、好きな場所で食べて、そして気が向いた場所で泊まる。そんな旅は、お仕着せの観光なんかでは絶対に味わえない、自分で物語を作り出していく旅でした。 今では、登山の世界では「ウルトラライト」のコンセプトで、あらゆる装備が極限まで軽量コンパクト化されて、昔と比べると同じ行程の装備が1/3以下の重量で済むようになっていますが、バイクツーリングも同様に、昔の装備と比べれば半分以下の重量とカサに収まるようになりました。 荷物が減るということは、それだけ身軽になって機動力も上がり、より自由な旅が楽しめるということです。昔なら、荷物が多くて進入するのをためらわれたようなトレールも、身軽さ故に気軽に入れるし、軽いということは当然燃費にも好影響ですから、より距離が稼げる=遠くまで行けるわけです。「ツーリ ングマップル」の取材は、個人的な旅と違って、気に入った場所にベースキャンプを張って、そこから空身で出掛けたりはせずに、点々と移動して行きますので、装備が軽くコンパクトなのは、これ以上ありがたいことはありません。 といったわけで、今週から、これからキャンプツーリングを始めてみようという方はもちろん、ベテランの方々にも参考となるように、ぼくが「ツーリングマップル」の取材で実際に使用している装備を中心に、最新のキャンプツーリングのギアのあれこれを紹介してみたいと思います。

キャンプツーリングのテント


まず、旅先の宿となるテントですが。ソロの場合はスノーピークの「ランドブリーズソロ」もしくはコールマンの「ツーリングドームST」、複数で一つのテントを利用する場合はファイントラックの「ポットラック」というモノポールテントを使用しています。 スノーピークの「ランドブリーズソロ」は、ツーリング用というよりは山岳テントですが、三者の中では最も軽く、設営ももっとも手軽で、おもにパニアケースなどの容量の多い積載手段がないときに使います。

ランドブリーズシリーズは2020年にモデルチェンジ。現在は「ランドブリーズPro」シリーズが販売されています

コールマンの「ツーリングドームST」は、ソロもしくは二人用のテントで、大型のフライシートが広い前室を構成するのが特徴で、ブーツやヘルメット、取り外したケースなどは前室に置いて、テント内が広く使えるのが特徴です。

コールマンの「ツーリングドームST」。キャンプツーリングの定番ですね。

ファイントラックの「ポットラック」は、モノポールテントながら耐風性が高く、最大で四人が楽に寝られる広さがありながら、コンパクト性は「ランドブリーズソロ」と変わらない最新のウルトラライトモデルです。モノポールテントはペグダウンする箇所が多く、設営に多少手間がかかりますが、タンデムもしくはマスツーリングで共用する場合は人手があるので、苦になりません。(※編注:ポットラックは現在販売されていません)

スリーピングマット


次に、テントに敷くマットですが、これは「クローズドセルフォームタイプ」と呼ばれる、ソフトウレタンと空気の併用式のサーマレスト「プロライト・エクストラスモール」を使っています。このタイプのマットは、エアバルブから空気を抜いて圧縮することでコンパクトになり、使うときは適度なロフト(厚み)と硬さになるまで空気を吹き込んで使います。エアマットはパンクしてしまうと使いものにならず、ウレタンマットはかさばるという欠点がありますが、このタイプでは例えパンクしてもある程度のロフトがあるので使用でき、しかもコンパクトになるという利点があります。 サイズは半身用で、上半身から尻にかけてはこのマットがカバーし、脚の下はジャケットやアウターパンツをクッション代わりにしています。圧縮した時のサイズは500ccの缶ビール程度になるので、日帰りツーリングやトレッキング時などにも持参して、休憩時にクッションとして利用します。

サーマレスト「プロライト」※こちらはレギュラーサイズ

シュラフ


シュラフはモンベル製の昔のスリーシーズン用の二種を季節に応じて使い分けています。 モンベルのシュラフは、昔から体感温度別に何種類もラインナップされていて、#1~#5の順番で厳冬期~ミッドサマー対応となっています。ぼくが良く使うのは#3と#4。#3は春と秋用で、山の高いところで多少冷え込んでも問題のない仕様。#4は肌掛けのように軽くソフトで、コンパクト。真夏に使用します(現在「スパイラル バロウバッグ」シリーズの場合#0~#7の6商品で#4と#6なし)。

モンベル(mont-bell) 寝袋 バロウバッグ #3。使用温度に応じて選ぼう

キャンピングギアとして、あとはストーブ、ランタン、コッヘル、荷物を収納する防水パックなどがありますが、それらは、次回ご紹介しましょう。

関連記事