2021.05.20

【10年目の東北太平洋沿岸をカソリが行く!<第5回> 】

賀曽利さんの「鵜ノ子岬→尻屋崎」。5日目をお届けします。

著・賀曽利隆

石神温泉を出発


3月15日。夜明けとともに起きると、すぐに外を見る。ありがたい。晴れている。まる2日間、雨と雪に痛めつけられたので、晴天がうれしい。 朝湯に入り、朝食を食べ、7時に石神温泉を出発。「鵜ノ子岬→尻屋崎」の復路編を開始する。 石神温泉から国道279号で田名部(むつ市)へ。ここから高規格道路経由で鵜ノ子岬を目指すのだ。 むつ尻屋崎ICで下北半島縦貫の下北道に入り、次のむつ東通ICで降りた。開通したのはむつ市内の1区間だけだったが、東北最北の高規格道路を走れてよかった。

石神温泉の夜明け。恐山が見えている

石神温泉の朝食

石神温泉を出発。うれしい青空

田名部(むつ市)に到着。後ろに雪の恐山が見える

むつ尻屋崎ICから下北道に入る

東北最北の高速道路、下北道を行く


下北道の1区間を走り、むつ東通ICで降りると、国道338号経由で国道279号へ。国道279号でむつ市の市街地を走り抜けて南下。国道279号沿いでは、むつ~七戸間の「下北道の早期完成を!」の看板を見る。 境川を渡って横浜町に入ると、横浜吹越ICから下北道に入る。そこからは六ヶ所、野辺地北、野辺地木明、野辺地ハーフの各ICを通り、野辺地ICで国道4号に出る。 交通量も少なく快適に走れる下北道。野辺地からさらに七戸まで延伸し、そこで上北道に接続する計画もあるようだ。

むつ東通ICで下北道を降りる

国道279号でむつ市の市街地を走り抜ける

横浜吹越ICで下北道に入る

まだ雪の残る下北道

野辺地ICで国道4号に出る

下北道から上北道へ


下北道の野辺地ICで国道4号に出ると、東北町を通って七戸町に入る。この一帯の雪はすごい。国道4号の路面に雪はなかったが、路肩には雪がうず高く積み上げられている。野も山も一面の雪景色。 野辺地ICから国道4号を12キロ走った地点の十字路を左折。この道が上北道に接続する。この交差点を右折するとみちのく道路になり、青森市に通じている。 上北道への接続道路を行く。南側では上北道の建設が進んでいる。その向こうにはまだたっぷりと雪を残した八甲田の山々が見える。 国道4号の交差点から8キロ走ると上北道の七戸ICに到着。ここから上北道に入る。上北道を南下すると、スーッと雪は消えていく。 上北道から第2みちのく道路→百石道路と走り、八戸道に入っていく。この間、第2みちのく道路に料金所があるが、二輪車は150円。125cc以下は通行不可だ。

国道4号の雪の壁

上北道は国道4号のこの先の交差点を左折する

上北道への接続道路。右手に八甲田が見えている

上北道に入るとスーッと雪は消えていく

第2みちのく道路の下田本線料金所

三陸道を南へ


七戸ICで上北道に入り、第2みちのく道路→百石道路と走りつないで八戸道に入ったが、その間で停車したのは第2みちのく道路の料金所だけ。そこで第2みちのく道路の通行料を払い、八戸道の通行券をもらう。百石道路から八戸道へと走りつなぐが、そこでは単に道路名が変わるだけだ。 八戸JCTの料金所から三陸道に入る。三陸道はここから宮城県の鳴瀬奥松島本線料金所までは無料供用中だ。 三陸道を南へ。 階上ICを過ぎると、青森・岩手県境を越え、終点の洋野種市ICで国道45号に降りる。国道45号を18キロ走り、侍浜ICで三陸道に入り、12時に終点の久慈ICに到着。八戸JCTから久慈ICまでは1時間もかからなかった(洋野種市IC~侍浜IC間はこの5日後の3月20日に開通した。八戸~久慈間はさらに所要時間が短縮された)。 久慈から国道45号で野田へ。野田では道の駅「のだ」(ツーリングマップル東北81L-3)で、「のだ塩ソフト」を食べた。定番の「のだ塩ソフト」をペロペロ舐めながら、三陸道のすごさを実感するのだった。 三陸道の「久慈~野田」間は今年の夏には開通する予定。驚異的な速さで建設が進む三陸道だが、さらに「野田~普代」間も今年度中に開通予定なので、そうなると「仙台~八戸」間の全線が繋がるという。三陸道の全線開通のもたらす効果は極めて大きい。「三陸新時代」の到来だ。

八戸道の八戸JCTの料金所から三陸道に入る

終点の洋野種市ICで三陸道を降りる

侍浜ICから再度、三陸道に入る

野田の道の駅「のだ」に到着

道の駅「のだ」の「のだ塩ソフト」

三陸鉄道に乗ろう!


野田の道の駅「のだ」を出発。ここは三陸鉄道の陸中野田駅でもある。国道45号で普代に向かっていく。巨大防潮堤のすぐ脇を三陸鉄道の線路が通り、そのすぐ脇を国道45号が走っている。右手には太平洋と野田の町を分ける新しい公園が広がっている。十府ヶ浦海岸の十府ヶ浦公園だ。国道45号が左に大きくカーブするところには、三陸鉄道の十府ヶ浦海岸駅がある。 三陸鉄道の次の駅は野田玉川。ここには「西行屋敷跡」(ツーリングマップル東北81L-4)がある。かの西行は日本中を放浪し、ここまでやって来たことを証明する感動のポイントだ。 三陸鉄道の次の駅は堀内(ほりない)。このあたりから見る三陸の海は、「盛~久慈」間の三陸鉄道の中でも一番の絶景だ。 普代の町に着くと、三陸鉄道の普代駅前でVストローム250を止めた。雨と雪と寒さに打ちのめされた往路編の時とは大違いで、抜けるような青空が広がっている。 「がんばれ、三陸鉄道!」 と、普代駅前で三陸鉄道にエールを送る。 普代駅前の駐車場にバイクを止め、三陸鉄道の「普代~陸中野田」間を往復するのもオススメ。みんなで三陸鉄道に乗ろう!

道の駅「のだ」は三陸鉄道の陸中野田駅

道の駅「のだ」から見る三陸鉄道の陸中野田駅

十府ヶ浦海岸の防潮堤と防災林、それと三陸鉄道

三陸鉄道の堀内駅近くの十沢漁港

国道45号で普代の町に入っていく

田野畑から三陸道で宮古へ


普代ICから三陸道に入った。田野畑北ICを通り、尾肝要トンネルを抜け出たところが終点で、国道45号で田野畑村を走り抜けていく。そして田野畑南ICで三陸道に入る。田野畑北ICから田野畑南IC間は工事中で、その間には田野畑ICができる予定。 田野畑南ICで三陸道に入ると、鵜の巣断崖、岩泉龍泉洞、岩泉南、田老北、田老真崎海岸、田老南、宮古北の各ICを通って宮古中央JCTまで一気に高速道を走る。 宮古中央JCTからは宮古西道路で終点の宮古根市ICまで行き、国道106号に出た。この国道106号は宮古盛岡横断道として装いも新たに生まれ変わった。「宮古~盛岡」間の3区間が3月28日に開通し、これをもって復興道路の宮古盛岡横断道の全線が完成した。盛岡側で建設工事が始まったのを見たときは、全線の開通はまだまだ先のことになるだろうと思っていただけに、驚きの早期完成だ。

普代ICから三陸道に入る

田野畑南ICから再度、三陸道に入る

宮古中央JCTから宮古西道路を行く

宮古西道路の終点宮古根市ICまで走り、国道106号に出る

国道106号沿いの閉伊川の流れ

三陸新時代!


宮古盛岡横断道路の国道106号から宮古西道路に再び入り、宮古中央JCTから三陸道を南下する。山田、大槌、釜石を通り、三陸ICでいったん高速を降り、国道45号の道の駅「さんりく」(ツーリングマップル東北58K-6)で小休止。八戸JCTからここまで、三陸道にはSAはもとより、PAもないので、三陸ICを出てすぐのところにある道の駅「さんりく」は貴重な存在だ。ここでは「たいやき」を食べたが、粒あんの甘みが疲れをいやしてくれた。 三陸ICから再度、三陸道に入る。無料供用区間なので、インターでの乗り降りは自由にできる。大峠の新三陸トンネルを走り抜け、大船渡、陸前高田を通って宮城県に入った。「いや~、速い、速い!」 三陸道は時代を変えた。 宮城県に入ると、3月6日に開通した三陸道の気仙沼区間を走り抜けていく。Vストローム250を走らせながら、新時代の到来を強く感じるのだった。これで海側の三陸道、山側の気仙沼バイパス(国道45号)と、気仙沼の市街地迂回ルートは二本立てになり、市内の渋滞は大幅に緩和されることになった。 気仙沼を過ぎると、南三陸から石巻へ。その間では三滝堂ICで降り、三陸道に接続している道の駅「三滝堂」(ツーリングマップル東北47J-4)に出ようとしたが、ここでは一時停止違反の取締りをやっていた。 「危うし、危うし」 危うく捕まるところだった。 道の駅「三滝堂」で缶コーヒーを飲んでひと息入れ、登米市から石巻市へ。石巻女川ICで三陸道を降りたが、八戸JCTからここまで6時間15分だった。

国道106号から宮古西道路で三陸道へ戻る

三陸道からの山田の町並み

道の駅「さんりく」で小休止

三陸ICから三陸道をさらに南へ

石巻女川ICで三陸道を降りる

「サンファンヴィレッジ」に戻ってきた!


石巻女川ICで三陸道を降りると、国道398号で女川に向かう。ICと接続するこちらの国道398号はバイパスで、石巻の中心街を走り抜ける国道398号とは別ルートなので要注意。途中からは県道234号になって万石浦でもともとの国道398号に出る。 この地点は石巻市と女川町の境近くの石巻市側で、T字の交差点を右折してJR石巻線の渡波(わたのは)駅前でVストローム250を止めた。ここから県道2号で万石浦にかかる万石橋を渡り、今晩の宿、「サンファンヴィレッジ」(ツーリングマップル東北41K-7)へ。 石神温泉から491キロ。 三陸道のおかげでまだ明るい時間(17時45分)に着くことができた。夕食の麻婆豆腐を食べながら飲む缶ビールはうまかった!

石巻女川ICで三陸道を降り国道398号を行く。夕日が道路上に落ちていく

赤く染まった石巻湾。手前には帆船の「サン・ファン・バウティスタ号」

「サンファンヴィレッジ」に戻ってきた!

「サンファンヴィレッジ」の夕食

第5回で賀曽利さんが走った高規格道の場所を画像でまとめました(編集部)

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