2023.06.23

ツーリングマップル取材担当者が選ぶ巨岩奇岩百選~中部北陸編~

ツーリングマップル2023年度版から、取材担当者が選ぶ日本各地の奇岩巨岩百選を掲載しています。その中から各エリアの10選をピックアップしてご紹介!今回は中部北陸編です。

著・内田一成

【紹介スポット】


1.日石寺磨崖仏【富山県】 2.天柱石(てんちゅういし)【富山県】 3.岩屋岩陰遺跡【岐阜県】 4.苗木城【岐阜県】 5.尾張富士【愛知県】 6.乳岩(ちいわ)【愛知県】 7.天白磐座遺跡(てんぱくいわくらいせき)【静岡県】 8.八丁鎧塚古墳【長野県】 9.石の木塚【石川県】 10.呼鳥門(こちょうもん)【福井県】

1.日石寺磨崖仏【富山県】


ツーリングマップル➡中部北陸 P.92 B-6/関東甲信越 P.67 B-6

日石寺不動堂は巨大な岩を抱えるように建つが、その内陣正面に不動明王と迦童子、立山の神仏の象徴としての阿弥陀如来坐像と僧坐像が浮き彫りにされている。薄暗い内陣の中に浮かび上がる姿は、現代人が見ても畏怖を覚えるが、創建された平安時代の人たちはさぞ肝を冷やされただろう。この寺が開かれる前は、自然石に浮かび上がる影が神仏のように見え、後にそれをはっきりした形に彫り上げて、寺の本尊としたのかもしれない。

2.天柱石【富山県】


ツーリングマップル➡中部北陸 P.85 M-5

合掌造りで知られる五箇山の外れ、川沿いの藪を抜けていくと、そそり立つ岩が忽然と現れる。この天柱石は、昔から飛騨地方の名勝とされ、今は南砺市指定文化財に指定されている。巨大な安山岩の一枚岩は、古代から神聖視されきたもので、UFOマニアや巨石・磐座(いわくら)マニアの人気スポットになっている。

3.岩屋岩陰遺跡【岐阜県】


ツーリングマップル➡中部北陸 P.60 G-6/関西 P.84 G-6

岐阜県下呂市金山町にある巨岩群。縄文時代の遺跡などもあって、太古から太陽信仰の聖地だったのではという説もある。山中いたるところに巨岩があって、たしかに得体のしれない古代遺跡ででもあるかのように感じさせる。岩に刻まれた線が人工的なペトログリフ(線刻)だと主張する巨石マニアもいるが、これは単なる柱状節理。だけど、自然の造形がいかにも人工物のような感覚を感じさせる面白さがある。

4.苗木城【岐阜県】


ツーリングマップル➡中部北陸 P.51 E-6/関東甲信越 P.21 B-6

岐阜県中津川市苗木にある山城跡だが、山頂の巨大な岩盤に城跡がある。自然の岩盤と巨岩も圧巻だが、緻密な石組みの石垣跡も迫力があり、まるでインカのマチュピチュを思わせるような景観を生み出している。また、ここからの景色も素晴らしく、東には恵那山の威容を望み、眼下には木曽川の雄大な流れを辿ることができる。その木曽川から吹き上がってくる風が涼しく、夏の暑さを吹き飛ばしてくれる。

5.尾張富士【愛知県】


ツーリングマップル➡中部北陸 P.39 B-4/関西 P.69 B-4

愛知県犬山市にある尾張富士には、「石上げ祭」という面白い祭りがある。毎年8月、氏子たちが夜のうちに大きな石を担ぎ上げて山頂に置くというもの。天保年間に大宮浅間神社の祭神コノハナサクヤヒメが、近くの村人の夢に現れ、隣の本宮山よりも尾張冨士の方が低いことを嘆き、山頂に石を積み上げたならば願いをかなえると言ったという「背比べ伝説」が元となった祭りで、おびただしい数の石が積み上げられている様は圧巻。

6.乳岩【愛知県】


ツーリングマップル➡中部北陸 P.28 J-7/関東甲信越 P.7 J-7

奥三河は秘境的なムードが濃い山峡が多いが、この乳岩のある乳岩峡は、その中でも神秘さでは一番。国の名勝にも指定されている乳岩は、洞窟になっていて、その内壁に乳房状の鍾乳石が下がっていることからその名がつけられた。誰でも敬虔な気持ちにさせるその風景にたくさんの観音様が祀られていて、さらにムードが高まる。乳岩の後背の山頂近くには通天門といわれる天然の石門があって、その威容に圧倒される。

7.天白磐座遺跡【静岡県】


ツーリングマップル➡中部北陸 P.20 J-7/関東甲信越 P.4 J-7

奥浜名湖にあるこの遺跡は、1984年に地元の人たちがが下草や低木に覆われ荒れていた巨石の周辺を手入れをしたことで現れた。古墳時代の土器が200点以上、滑石製勾玉、鉄矛、鉄刀、鉄鏃、などが多く見つかっていて、古墳時代前期後葉から平安時代中期の祭祀遺跡と考えられている。ここもまた、磐座(いわくら)マニアやスピリチュアル好きな人たちに人気で、妙なお祈りをしている人もいたりして、なかなかに異世界感が漂っている。

8.八丁鎧塚古墳【長野県】


ツーリングマップル➡中部北陸 P.94 E-7/関東甲信越 P.69 E-7

これは巨石ではなくて、いわゆる積石古墳だが、直径25.5m、高さ2.5mと積石塚としては東日本で最大、最古の古墳で、巨石信仰のように、地元では大切にされてきた。須坂市南部の、ぶどうやりんご畑が広がる長閑な風景の中にあって、突如現れる大規模古墳には圧倒される。同じ高さに設えられた展望台があり、眼下に須坂の町並みが、そして北アルプスをメインに、飯縄山、戸隠山、黒姫山、妙高山といった北信の山々を一望できる。

9.石の木塚【石川県】


ツーリングマップル➡中部北陸 P.84 L-3/関西 P.92 B-4

石川県白山市石立町の住宅街の中にある遺跡。町名もこの遺跡にちなむ。四角柱状の石を四隅に配置して、中心にも一基。この中心石から四隅の石の方向は東西南北になっている。いわゆる「ストーンサークル」と同様の祭祀遺跡と考えられている。また、10世紀後半~11世紀前半の土師器が出土していて、加賀国津比楽湊に関連した古代交通路関連の遺跡であった可能性も高いとされる。巨大なものではないが、古代のロマンを感じさせる。

10.呼鳥門(こちょうもん)【福井県】


ツーリングマップル➡中部北陸 P.67 H-5/関西 P.85 H-5

福井県から石川県の能登にかけての海岸線は、巨岩・奇岩が続いて風景が見飽きないところだが、福井県越前町の越前岬近くにある呼鳥門は、中でも圧巻。礫岩が自然の風と波の浸食作用を受けてトンネル状に抜けていて、その高さは約15m、幅は約30mもある。以前は全国で唯一の国道が貫く天然トンネルだったが、国道が移設され、今では遊歩道となっている。呼鳥門の名は「渡り鳥を呼ぶ門」という意味で名付けられた。

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