2020.05.29

ツーリング前に知っておきたい!「あの映画・小説はココで生まれた」vol.11

漫画やアニメ、映画やドラマ、小説、歴史的事件などの舞台を旅する「聖地巡礼」がメジャーになってきた昨今。物語の舞台になった場所は日本中にたくさんありますが、案外、そのことを知らずにツーリングで訪れて満足していることも多いものです。 せっかく行くなら、その土地にちなんだ作品を鑑賞したり、歴史を知ったりしたうえで行ったほうが、何倍も楽しめますよね!そんな作品や歴史、土地について、ツーリングマップル各著者から紹介していもらいます!気になった作品を見て、その場所を訪れてみましょう!

著・

「シャイニング」(映画・小説)の舞台(?) by 内田一成(中部北陸担当)


2019年末公開された映画「ドクタースリープ」は、スティーブン・キングファンならあの「シャイニング」から続く世界観をどのように表現したのだろうと、興味津々のはず。

映画の「シャイニング」は、名匠キューブリックのシナリオと演出を原作者のキングが気に入らなかったというけれど、個人的には、原作の雰囲気をさらに深化させて、ジャック・ニコルソンの怪演と合わせて、ゴシック的な雰囲気をたたえた重厚な作品になったと思う。

あの惨劇となった舞台が、40年の時を経て、再び蘇ってくる。原作では、名人キングらしく、最大限の恐ろしさの中に、とてつもない救いとカタルシスを織り込んで、何百ページにもわたって続いてきたホラーが一気に心洗われるヒューマンドラマに転化される。 そして、ここでもシャインニングから舞台となってきたあのホテルが、巨大な存在感を放っている。 この、シャインニングとドクタースリープで舞台となったホテルは、もちろん日本には存在しない。いちおう舞台設定は、コロラドの隔絶された山の中のリゾートホテルということになっている。 だけど、ツーリングで日本の山岳リゾートを巡っていると、あの作品の舞台となったホテルは、こんな感じじゃなかろうかと、ふと気になることがある。 人家が絶えた山道を辿っていって、いったいここはどんなところに続いているんだろうと疑問に思いながらも先へ進んでいくと、突然広い場所に出て、そこにはいかにも欧米の山岳リゾートにありそうなホテルが建っている。植え込みがきれいに刈り込まれ、敷地は塵一つなく掃除が行き届いているが、なぜか人の気配がない。 茫漠とした雰囲気に包み込まれて、もしかするとこのホテルが自分を呼び寄せたんじゃないかなどと感じてしまう……。 そりゃあんたスティーブン・キングの読みすぎ、シャイニングの観すぎだよ(たぶん20回近く観ている)と笑われそうだけれど、じつは、そうした小説や映画になった舞台を想像できる場所と出会えると、ウキウキしてしまうのだ。 例えば、中央構造線の深い谷を走る国道152号線を辿り、途中から東に連なる山並みに登っていくと、抜群の見晴らしを誇る「しらびそ峠」に出る。 この近くにある「しらびそ高原 天の川」(旧しらびそハイランドホテル)は、まさにシャインニングの舞台を彷彿させる人跡まれな場所にある山岳リゾートだ。といっても、小説と同じように魑魅魍魎が跋扈しているわけではなくて、とても明るく快適なホテルだ。でも、そのロケーションから、ここがあの小説や映画の舞台となったところだと想像してみると、子供が妄想して遊んでいるように楽しくなってくる。 誰でも、好きな小説や映画はあるはず。こどものときに読んだ絵本やおとぎ話でもいい。その好きな物語の舞台を思い出して、それに似たような場所を訪ねてみるといい。それだけで、なんだか楽しくなってくるはずだから。 次回は、ほんとに舞台となった場所の話をしてみようかな(笑)

関連記事