2021.07.13

初めての海外ラリー「オフロードバイクライフ」by 博田巌 vol.4

ツーリングマップル中国四国担当の博田さんによるコラム「オフロードバイクライフ」。幼少時から旅に親しみ、自転車、そしてバイクで走ることに魅了されていった博田さん。地図との出会い、林道との出会いを経て、地元のラリーイベントに出場。そこでの活躍やオフロードライダーとの交流の中で、「海外ラリー」への関心も高まっていきます。今回はそんな初参加・初海外のお話です。 ※当記事はツーリングマップル週刊メルマガにて2017年1月~2月に配信した記事を再編集したものです。

著・博田巌

「ラリーレイドモンゴル」 海外ラリーへの初参加


「95年7月に、モンゴルで初めてラリーが開催される」 とアナウンスされたのは、その前年のTBI(ツールドブルーアイランド)でのこと。国土が日本の4倍もあるモンゴルを、10日間でほぼ1周5000km走破するという、何とも冒険心をくすぐられる内容でした。「大草原が広がる」というイメージしかないモンゴル、果たしてどんなところなんだろう?と、そこで初めて開催されるラリーには心が揺れました。 主催者がSSER(四国スーパーエンデューロラリー)やTBIを開催している日本人ということもあって、初めての海外ラリーとしては挑戦しやすかったように思います。実際に出場を決めて、準備を始めたのは年末近くになってから。 今でこそ、海外メーカーから出されているアフターパーツの組み合わせなどで、比較的簡単にバイクを「ラリー仕様」に仕上げることが出来るし、情報だって、インターネットで簡単に世界中から集められますが、当時はそんなものはなく、まったくの手探りです。 それでも幸いなことに、身近にいた先輩ライダーが「オーストラリアンサファリ」に出場したということで、いろいろと手伝ってもらえて、僕はそれまで乗っていたXR600をベースに出場車両を製作しました。ここまでの作業量はとても多く、その苦労を考えると、ゴールデンウィーク明けに車検を兼ねて積出港へ持ち込んだ時には、すでにラリーを終えたくらいの気分でした。

実はこれが初の海外旅行でもあった・・・


それから2か月後、いよいよモンゴルのウランバートルへ。実は僕にとってはこの時が初の海外旅行。いろいろな意味でドキドキしていました。1992年に民主化されたばかりのウランバートルは、まだまだ旧共産圏の雰囲気が残っています。少し郊外に出ると、どこまでも続く緑の絨毯のような草原と、大きな青い空が広がって、この光景を見ていると、ちょっと不安ながらも 「やっと走れる」 という高揚感に包まれました。 そんな良い気分も、宿泊先のツーリストホテルで出された食事で見事に打ち砕かれてしまうのだけど…。 「初めてのモンゴル料理って、こんなものか?」 と、食べたほぼ全員が腹をこわしてしまうという、今となってはいい思い出ですが、このせいでラリー中に出される地元の羊料理が食べられなくなったのは残念でしたね。

ラリーレイドモンゴルからパリダカールラリーへ


さて、メインのラリーの話。 実際に走る前は、大草原の中を、ハイスピードでどんどん移動できると思っていたモンゴルの大地でのラリー。しかし、北に行けば渓谷や針葉樹が覆う森林地帯、湿地帯で、川渡りも多い。南に行けばゴビ砂漠が広がっています。風景は想像をはるかに超えて大きく変わり、気温の変化も激しい。そんな土地で、モンゴル人も入っていかないような奥地まで踏み込んで行く、まさに「冒険」そのものでした。 とくに、初めて走った砂丘群ではGPS機器を壊したこともあって、熱い砂の海の中で途方に暮れたこともありました。これは今振り返ってもとても刺激的な出来事です。 一方でキャンプ地には地元のモンゴル人たちも遊びに来て、彼らとの触れ合いも大きな楽しみでした。言葉は通じないのに、よく馬に乗せてもらったりもしました。ほかの参加者の中には暗くなってから、遊牧民の住むゲル(移動式住居)に泊めてもらったなんていう人もいて、そんな話を少しうらやましく聞いたものです。 「ラリー」というと、過酷なイメージもあると思いますが、大きなミスコースや転倒などのトラブルを避け、明るいうちにその日のキャンプ地に辿り着ければ、主催者の用意してくれた温かい食事が食べられるし、テントなども運んでくれます。そう考えると身軽な装備で、普段走ることが出来ない特別な場所を走れる「とても贅沢なロングツーリング」と言えなくもありません。途中に素敵な景色が現れても、なかなかのんびり眺めたり出来ないのですが。でも何より、大好きなオフロードバイクで「自分の好きなことをやっている」という感動があります。 今また同じことを「やりたい」とも「やれる」とも思わないんですが(笑) こうして、運よくいい成績で3年連続ラリーレイドモンゴルを走ることが出来た僕は、次のステップ、パリダカールラリーへと向かうことになりました。

ラリー中の写真。ラクダが観戦中

左端が博田さん

博田さん(右)とツーリングマップル九州沖縄担当の坂口さん(左)お二人とも若い!

ラリー優勝者の博田さんを囲んで。右上の方には、ツーリングマップルの治武カメラマンの姿も…

2021年度版取材時のお三方。(左)坂口さん(中央)博田さん(右)治武さん

 


 

「ラリーレイドモンゴル」第一回の記事が掲載された雑誌「Number」より

こんなところ走ってみたくないですか?

これがラリーのルート。広大なモンゴルをこんなに…!

博田さん(当時23歳)カッコいいですね!バンダナにはなんとOutRiderの文字が…

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