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2019.11.21
ツーリング前に知っておきたい!「あの映画・小説はココで生まれた」vol.3
漫画やアニメ、映画やドラマ、小説、歴史的事件などの舞台を旅する「聖地巡礼」がメジャーになってきた昨今。物語の舞台になった場所は日本中にたくさんありますが、案外、そのことを知らずにツーリングで訪れて満足していることも多いものです。 せっかく行くなら、その土地にちなんだ作品を鑑賞してから行ったほうが、絶対に楽しめますよね!そんな作品と土地について、『関西』担当著者の滝野沢優子さんから紹介していもらいます!気になった作品を見て、その場所を訪れてみましょう!
第3回 映画「ラストサムライ」(2003年)の舞台
映画「ラストサムライ」をご存知でしょうか? 明治維新直後、急速に西欧化を進める日本を舞台にしたハリウッド映画で、主演はトム・クルーズ。準主役に渡辺謙、そのほか真田広之、小雪など、多くの日本人俳優が起用されたことで話題になりました。大まかなあらすじは以下です(ネタバレを避けたい方は読み飛ばしてください)。 ================================= アメリカ南北戦争の英雄・オールグレン大尉(トム・クルーズ)は明治新政府の軍事顧問として来日。西洋式軍隊の指導をしますが、急ごしらえの軍隊は士気も低く、勝元(渡辺謙)率いる不平士族軍に破れてしまいます。 捕らわれたオールグレンは、勝元の住むサムライの村に連れていかれたものの、手厚いもてなしを受けながら生活するうち、サムライの精神に惹かれ、勝元と運命を供にするように。 やがて再び政府軍との戦闘が行われ、近代兵器を前にサムライたちはすべて討ち死にしますが、最期まで勇敢に戦った武士道精神に政府軍の兵士も感銘、全員が土下座して敬意を表したのです。ラストは一人生き残ったオールグレンが、再びサムライの村に戻っていくシーンでした。 ================================= 渡辺謙演じる勝元のモデルは西郷隆盛ですが、ドキュメンタリーでもないし史実に基づいた歴史映画でもありません。 あくまでも「欧米人から見た理想のサムライ」をイメージしたエンターテインメントという前提で鑑賞してください。ニンジャが唐突に出てくるのも許してやってくださいね。そうそう、中村七之助演じる若き日の明治天皇も、とても印象的な役柄でした。 この映画の中で、勝元が住むお寺として登場するのが兵庫県姫路市の郊外にある書寫山圓教寺(しょしゃざんえんきょうじ)。平安中期の康保3年(966年)、性空(しょうくう)によって創建された天台宗の別格本山で、西国第27番札所でもあります。西国札所きっての大寺で、標高371mの書寫山全域に多くの伽藍が点在しています。
「西の比叡山」とも言われるわりに、全国的にはあまり有名ではないように思いますが、関西の方なら知っているのかな?少なくとも関東育ちの私は、ツーリングマップル関西担当になってから初めてその名を知りました。 2010年の初訪問時も映画のロケ地ということさえ知らず、「どうせ大したことないだろう」と期待もせずに行ったのですが、なかなかどうして、威風堂々とした素晴らしいお寺だったのでとっても感動したのでした。 参道までは、麓からロープウエイでアクセスできますが、山上駅から先はすべて徒歩です。仁王門からしばらく参道を登ると突如として摩尼殿の伽藍が現れ、その荘厳さと大きさに圧倒されますが、それだけではありません。さらに行くと大講堂と食堂(じきどう)、常行堂がコの字に囲む空間があって、その静謐な空気に思わず気が引き締まります。
大講堂
トム・クルーズが渡辺謙と初めて対峙するのがここで、映画のシーンを思い浮かべながら見学すると、より一層感慨深いものがあります。さらに奥の院、金剛堂、薬師堂などもあって歩く距離も半端ありません。 ちょっとした山登りだと覚悟しましょう。何しろ境内が広いので見学には最低2~3時間、できれば半日はかけたいところです。
それにしても、これだけ素晴らしいお寺なのに、平日だったせいか参拝客は少なく、意外に思いました。たった数キロ離れた姫路城には大勢の観光客が来るのに、なんだかもったいないですね。 蛇足ですが、書寫山以外の主なロケ地はニュージーランド北島のタラナキ地方で、サムライの村や戦闘シーン、横浜港のセットもすべて再現、富士山そっくりなタラナキ山も違和感なく登場しています。 映画が公開されたのは2003年11月。 私は当時、1年余りのアフリカツーリングの最後で、エジプト・カイロの映画館で観ました。たしか200円くらいと格安でした。アラビア語の字幕版ですが、会話は日本語がメインで英語少々なのでバッチリ理解できましたよ。映画館は超満員で、小雪とトム・クルーズのキスシーンでは、静かだった館内が異様に大盛り上がり。 男女交際に厳しいイスラム圏なので、あの程度でもかなり刺激的なのでしょうね。映画が終わって帰る途中、エジプト人の若者に、「どうだった?」と感想を聞かれました。なんて答えたか覚えてないけれど、私たちが日本人だとわかって、話しかけてみたかったのでしょうか。 そんなわけで、私にとって「ラストサムライ」の思い出は、汚い安宿で過ごしたエジプト・カイロの日々もセットになっているのでした。 関連リンク