2019.12.09

ツーリング前に知っておきたい!「あの映画・小説はココで生まれた」vol.5

漫画やアニメ、映画やドラマ、小説、歴史的事件などの舞台を旅する「聖地巡礼」がメジャーになってきた昨今。物語の舞台になった場所は日本中にたくさんありますが、案外、そのことを知らずにツーリングで訪れて満足していることも多いものです。 せっかく行くなら、その土地にちなんだ作品を鑑賞してから行ったほうが、絶対に楽しめますよね!そんな作品と土地について、『関西』担当著者の滝野沢優子さんから紹介していもらいます!気になった作品を見て、その場所を訪れてみましょう!

著・滝野沢優子

第5回 映画「二十四の瞳」(1954年)の舞台=小豆島


定番というかベタというか古いというか、いまさら感アリアリですが、小豆島といえば、やっぱり「二十四の瞳」。ほかにも映画やドラマの舞台になっていますが、知名度では文句なく、「二十四の瞳」でしょう。土庄港(とのしょうこう)近くには、大石先生と12人の子供たちをモデルした、「平和の群像」も建っているくらいです。

土庄港にある「平和の群像」

「二十四の瞳」は1952年(昭和27年)に発表された壺井栄(つぼいさかえ)の小説で、2年後の1954年に映画化されました。主演は高峰秀子。 昭和3年、女学校の師範科を卒業したばかりの大石先生(おなご先生)が、岬の分教場に赴任するところから始まります。そこで受け持った12人の生徒たちとの交流を中心に、軍国主義に傾き、第二次世界大戦へと突き進んだ当時の状況を淡々と描き、戦争の悲惨さを訴えています。

二十四の瞳映画村の一角

ところで、「二十四の瞳といえば小豆島」と一般的には定着していますが、実は小説では「瀬戸内海べりの寒村」としか書かれていません。映画化するにあたり、作者の壺井栄が小豆島出身なので決まったそうですが、半世紀以上経った現在でも小豆島の観光に大きく貢献していることを考えると、映画の影響って大きいですね。 今回、改めてネットで映画を見てみましたが、ストーリーそのものよりも大石先生が当時、島で1台しかない自転車に乗っていたことに、私としては大きく反応してしまいました。 小豆島の海をバックに颯爽と自転車で駆け抜ける様子は、とっても恰好よかったです。それにしても、あの頃に女学校を卒業して職業を持ち、自転車に乗り、洋装で通勤していた「ハイカラ」で「モダンガール」な大石先生。かなり先進的で裕福な家の出だったのでしょうか。 また、映画の中で「朧月夜」、「七つの子」、「ひらいたひらいた」、「汽車は走る」などの唱歌や、「アニーローリー」、「荒城の月」、「仰げば尊し」といった名曲が効果的に使われているのも見どころだと思います(途中には軍歌も挿入されていますが)。 とくに、前半の大石先生と子供たちが、桜の下や菜の花畑の中で一緒に歌いながら遊んだりハイキングするシーンは、ちょっとしたミュージカル仕立てになっていて、今見ても新鮮です。可愛いボンネットバスも登場するし、美しい小豆島の風景もたくさん映し出されているのにモノクロ映像なのが残念。カラーで見たいシーンです。

二十四の瞳映画村 巡回ボンネットバス

「二十四の瞳」は映画のほか、何度もテレビドラマ化されています。一番最近では2013年、松下奈緒主演で放映されていたようで、映画版と併せて見るのも興味深いですね。 さて、現在の小豆島の紹介です。瀬戸内海に浮かぶ島としては淡路島に次いで2番目に大きく、島の一周は100キロほど。鳴門、明石のどちらからも陸路で繋がった淡路島と違って、フェリーでしか行けないというのも、旅気分を盛り上げてくれます。

小豆島の位置図(図の中央)

観光の目玉はもちろん「二十四の瞳映画村」で、島の南東部田浦地区の、まさに岬の突端にあります。海沿いの広い敷地内に、映画やドラマで実際に使われた岬の分教場や男先生の家、茶屋などがあって、「二十四の瞳」の世界を再現しています。 そのほか昭和30年代の映画館を模した「松竹座」、土産物屋や食事処も揃っていて、ちょっとしたテーマパークのようです。さらに2019年7月には「フィギュアギャラリー海洋堂」(「二十四の瞳」と関係あるのかどうかは不明)もオープン、年々施設が充実しているようです。 ということで、「二十四の瞳映画村」は小豆島に行ったら絶対外せないポイントに間違いありませんが、小豆島の魅力はそれだけではありません。 日本で最初のオリーブ栽培地であり、「道の駅小豆島オリーブ公園」のオリーブ畑の中には真っ白なギリシャ風車が建っています。青い海をバックに"映える"写真が撮れるオススメスポットです。

道の駅小豆島オリーブ公園の風車。実写版「魔女の宅急便」のロケ地にもなった

そのほか、土庄にある世界一狭い海峡、干潮のときに現れる「エンジェルロード」、島中央部には、日本三大渓谷美・寒霞渓もあり、ダイナミックな景観も楽しめます。近年は「瀬戸内国際芸術祭」の会場になっているため、島内の随所に野外アート作品も点在、若い世代にも人気の観光地として注目されています。

”世界一狭い海峡”土渕海峡と横断証明書

また、小豆島は日本の「醤油の4大生産地」でもあります(他は千葉県の野田・銚子、兵庫県の龍野)。映画村手前の坂手地区には、醤油蔵や佃煮工場が並ぶ「醤(ひしお)の郷」があります。明治の最盛期には醤油醸造所が400軒以上、現在でも20軒以上も残る醤油生産地で、登録有形文化財の「マルキン醤油記念館」ほか、黒壁の古い建物が並ぶ一画は「近代化産業遺産」にも指定されています。

マルキン醤油工場

醤油をテーマとしたアート(瀬戸内国際芸術祭2013年)

ほかに、胡麻油を使った手延べ素麺も有名で日本三大素麺のひとつになっていますが、醤油の生産地でもあるためかラーメンもオススメだし、醤(ひしお)丼など、小豆島産の食材を使った食べ物はどれも絶品。

ごま油を使った小豆島手延素麺

小豆島の醤油が利いた「醤そば」

オリーブソフトや佃煮ソフト、醤油ソフトなどご当地ソフトクリームもたくさんあって食べきれません。

しょうゆソフト

オリーブの実

ああ、こうして書いているうちに、小豆島へ行きたくなってきました。今年の取材では行き逃したので、来年は必ず行かなくては!

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