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2025.12.31
【考察】「豪華海鮮丼」に心が躍らなくなったワケ
みなさんこんにちは。ツーリングマップルのマスキです!今回の考察テーマは、ツーリングメシのド定番「海鮮丼」について。 海鮮丼、旨いですよね。そう、旨いんだよ。理屈じゃなく旨い。でも最近、どうにも注文する気にならない…。旅先でメニューを見ても、「今回はいいかな」と思うことが増えてきた。なんでだろう。食べたいのに食べたくない…。別に体の調子が悪いとか、苦手な食材があるってワケでもないのに…。 そんなことをぼんやり考えていたら、先日ポンセ中村氏が似たようなことを話していて、「これは個人の好みの問題じゃなく、何か構造的な理由があるのでは?」と思った次第。皆さんは海鮮丼、最近食べてます?
【海鮮丼の「見た目」問題】
まず最初に皆さん、「海鮮丼」を思い浮かべてみてほしい(なお今回テーマにする海鮮丼は、うに丼、イクラ丼、さんま丼のような単色丼ではない、複数のネタが一つのどんぶりにちりばめられた丼のこと)…。どうだろう、イメージできたかな。だいたいの人はこんな海鮮丼を思い浮かべたんじゃないだろうか。
どこかのお店の海鮮丼を出すと良くないので、AIに生成してもらった「一般的な海鮮丼」
【派手なくせに、没個性】
海鮮丼は、派手だ。いろんな色のたくさんのネタが並び、きらきらしている。素の状態ですでに「映え」なんよね。でもこれが不思議なことに、どこの店でもだいたい同じ顔をしている。記憶の中の海鮮丼の印象って、どれも大差ない。ネタのいくつかが入れ替わったとて、結局全体としてはほとんど同じ姿にまとまっちゃう。 だからだろうか、個性を出そうと、やたら高く盛ってみたり、金箔散らしちゃってみたり、お店もそういう方向にいきがちだ。素で「映え」なのに、やりすぎてゴテモリの「あざと系の海鮮丼」になっちゃう。でもそれって正直食べにくいし、値段も高くなるばかり。 「いや、それもう丼にする意味ある?」 と思ってしまうようなケースも少なくない。結果として、 ・どこで見ても似たような海鮮丼か ・露骨に「映え」を狙ったあざとい海鮮丼か その二択になってしまうわけ。この状況についていけないのが一歩引いちゃう理由のひとつ。だったらもはや「丼丸」が最適解になっちゃうんだわ…(うまい、安い、好きなネタが食べられる。っていう)。 ※「丼丸」とは、テイクアウト専門の海鮮丼チェーン。ネタの組み合わせで何百種類ものメニューがあったり、でも価格はほぼ均一で500~600円程度で買える手軽さが人気。似たような業態で「魚丼」というチェーンもある。
丼丸メニューの一部(マジでごく一部)
【「結局、平均点に収束する味」問題】
次に、味の話。 海鮮丼の魅力は、ネタの種類の豊富さだろう。マグロ、サーモン、いくら、うに…。確かにどれも旨い。でも問題なのは、それがどこへ行っても安定して同じ美味しさってこと。「安定した美味しさが問題?何を言うとんねんこいつは…」とお怒りにならないでほしい。何度も言うけど、旨いんだよ海鮮丼は。それは分かってる。 言いたいのは「いまここで食べる理由」が味に現れにくいってこと。最近は冷凍技術も流通も優秀で、お店も企業努力を重ねている。だから、みんなが好むネタを、いい状態で出せるようになった。おかげで何県のどのお店に行っても、同じ〇〇産のネタが出せる。それはとても素敵なことではあるんだけど、ご当地のものが食べたい僕らにとっては悩みどころでもある。 もちろん、ご当地産のとびきり新鮮なネタが混ざることもある。しかしここが「海鮮丼」という料理の「構造上の弱点」とも言えるところで、とびきり旨いネタがひと切れふた切れ入っていても、全体としての評価は他の(安定して美味しいが、驚きはない)定番ネタに引っ張られる。感想はやはり「海鮮丼」としての平均点に着地してしまうのだ。 そして、こういうのに3000円を出すのは個人的にはあまり面白くない。「だったら丼丸でもいいかな」ってなっちゃう(丼丸からお金をもらっているわけではありませんw)。
飲み会に誘われて行ったら「まあ全体としてはなんかまあ、楽しかったかな・・でも会費高かったな」みたいな。
【そもそも海鮮丼のはじまりは…?】
ここで海鮮丼のはじまりを考えてみたい。 海鮮丼の原点は漁師飯だ(諸説あるが)。漁師たちが船上で手早く食事をとるため、どんぶり飯の上にその日獲れた売り物にならないような魚たちを、さっと捌いてじゃばっと乗っけて醤油をぶっかけワシワシかっこんで食べた。これが存外うめえってことで、港のメシ屋が真似して出し始める。これが外からの客の目に留まり、徐々に見た目を整え、人気のネタを集め、だんだん洗練されてくる。その分値段もどんどん上がり、気づけばいつしか高級料理。人気があって単価も高けぇってんで、ついに海から遠い山ん中でさえ出されるまでになった。これが今につながってるっつーわけだ。 まことに、人間の業が詰まったような料理だわな。そう考えてみりゃあ、いやむしろ、海鮮丼って面白いかもな、と思えてくるから不思議なんだが、おれぁ別にそんなしちめんどくせえこと考えながら食いてえわけじゃねえんでさ。その原点の、じゃばっと乗っけて醤油をぶっかけワシワシかっこむ海鮮丼を、食ってみてえもんだなあ…。 (なんで落語調に)
食いたい!!
【距離と時間は正義で正直】
全てがそうとは言わないが、おいしさと距離・時間の関係って必ずあると思っていて。例えば野菜や果物は、畑でもぎたてが一番うまい。肉や魚も、「熟成」なんて話はあれど、基本的には獲れたて捌きたてがやっぱりうまい。みんなそれを分かっているからこそ、どうやって収穫直後に近い状態をキープするかが研究され、技術や物流が発展してきたのだ。 だけどそれらがどんなに発展しようと、距離と時間は噓をつけない。どれだけ最新の冷凍技術を使っても、どれだけ全国どこでも同じネタが食べられるようになっても、 「さっきまで海にいた魚をここで食う」 これには敵わない。こだわりの強い料理人が、わざわざ産地の近くに店を出したりするのはそのためだ。考えてみれば、この「距離の短さ」と「時間の近さ」こそが、海鮮丼の一番の価値だったんじゃないだろうか。 豪華じゃなくても良かった。 種類が少なくてもよかった。 キラキラしてなくても良かった。 ただその場所で、その日獲れたものを、白メシといっしょにワシワシかっこむ。これで十分、これが最高だった。
時間と距離以外にも、その土地の空気や土(においとか微生物とか)なんかも「その場で食う」おいしさに影響しているかもしれない
【旅で何を食うかは自由】
別に「旅に出たら絶対にその土地のものを食え!」なんて言うつもりはないし、思ってもいない。 旅先で行く、すき家やマクドナルド、ファミレスなんかもけっこう乙なのだ。旅は食事だけじゃないし、食事も1回ではないわけで。全部に全力投球するのはもちろん理想だけど、旅ごとに何を重視するかを決めておけば心は楽になる。 逆に「何としてもご当地食を!」という強迫観念に駆られ、お店を必死で探したあげく、高い金払って食べた海鮮丼が、案外普通だった。なんて時の方がよっぽどがっくり来てしまう(それも含めてツーリングの面白さとも言えるんだけど)。 そういう経験を何度かしたことが、今回の問題「海鮮丼にワクワクしない」ことにつながっているのだけど、原点に近い海鮮丼を提供しているところはあるし、現代の海鮮丼でも思わぬうまさに目を見張るようなものも当然あるだろう。だから今度港町に行ったときには、勇気を出して海鮮丼を食べてみようと思う。 その結果、がっくり来るか、至福を得るか、今から楽しみだ。 びっくりするような美味しい海鮮丼があったら、教えてほしい。