2020.08.21

私を走らせるもの vol.2 北海道編(2)

思い出の風景、季節の味覚、そして本や映画、音楽などなど、あなたを旅へと誘うものは何ですか? あの頃見た光景が忘れられなくて…。小説に出てきた風景を自分の目で見たくて…。この曲を聴くと無性に旅に出たくなってしまって…。あの人に逢いたくて…。など、時に切なく、時に衝動的に、私たちを旅へ駆り立てる「装置」があります。不思議なことに、ほかの人にとっては何でもないものが、自分にとってはとても大きな影響を与えることも少なくありません。そんな、「私を走らせるもの」について、ツーリングマップル著者陣に語っていただきます。

著・小原信好

~私を走らせる北海道の直線道~ by 小原信好


1980年代の大バイクブーム時代の始まりに、私は高校生で原付免許を取得し、『バリバリ伝説』『ペリカンロード』などのバイク漫画やバイク雑誌を読むようになって、バイクの世界にハマっていった。 当時はレーサーレプリカ全盛期だったが、私はツーリングの世界にも興味を持ち始めた。そのうち、様々なバイク雑誌に登場していた、現『ツーリングマップル東北』担当の賀曽利隆氏を知る事になり、自分にとってバイク界の憧れの人となる。のちに賀曽利さんと同じ媒体の仕事をできるようになるとは夢にも思っていなかった。 夏になると、各誌で「北海道特集」が企画され、自分もいつか北海道をツーリングするんだ!と気持ちが増幅し始めた。ちょうどその頃に、ツーリングマガジン「アウトライダー」が創刊された。洗練されたデザインのページ構成とコピー、そして美しい写真。「道」が風景写真を際立たせ、 「ここに行きたい!ここを自分のバイクで走ってみたい!」 そう思わせてくれた。 その時から今日まで、「ここに行きたい!ここを走ってみたい!」と思わせる「道」が、私の写真のテーマとなっている。 さて、「北海道の道」と言えば、やはり地平線まで続く「直線道路」!だろう。 バイク雑誌の表紙や特集記事に採用される真っ直ぐな道は、本州のライダー達にとっては、いつか走りたい憧れの道だ。その中でも、サロベツ原野を海沿いに走る「道道106号稚内天塩線」(北海道56B-2)は、絶景直線道路の不動の国内トップロードだと思っている。信号も電柱もガードレールも無い区間があって、海には利尻島が浮かぶ。理想とする構図で、完璧な写真を撮ることが可能だ。

道道106号

近年では、オホーツク海側の「エサヌカ線」(北海道57B-1)が人気となり、道北方面の横綱級オススメ直線道路として「西にサロベツ、東のエサヌカ」と呼ぶようにしている。 「エサヌカ線」は、正式には「天北南部広域農道」だが、どこにも名称の記載が見つけられなかったために、私が「エサヌカ線」と表記し紹介を始めた。それが今では国道238号沿いに「通称エサヌカ線」の看板が設置されている。猿払村では「エサヌカ」のステッカーや走行証明書も販売されている。「道」を町おこしに利用して盛り上がっているのを見るのは嬉しい事だ。

エサヌカ線

また現在、全国的にも知名度が高まり、人気上昇しているのが斜里町の「天に続く道」(北海道49I-5)。防風林を切り裂くように、地平線まで真っ直ぐに続く道。以前は表記の無い木製の私設展望台があるだけで、これまた勝手に「名も無い展望台」と記載し、一部のライダー達には穴場の直線道路として知られていたのだが、今ではさまざまなメディアで紹介され、沢山の観光客が訪れている。

天に続く道

まだまだ穴場の絶景直線道は道内に存在するわけで、これからも探し続け、「ここに行きたい!ここを走ってみたい!」と思ってもらえる写真を撮るように、頑張って取材を続けてきたい。そんな風に思っているが、今回の新型ウィルス騒動で取材が進まず、ウズウズしているホッカイダー小原でした。

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