2025.10.08

【なぜ買った?】飲めないのに高級ウイスキーを衝動的買いした話【考察】

たいして呑めもしないのに、気づけば14,000円のウイスキーを抱えていた――。 それは単なる衝動買いではなく、「お金」や「満足」の正体を考えさせられる出来事だった。 今回は、そんな“買いもの哲学”のような話を少しだけ。 できればウィスキー片手に、テーブルに地図を広げて、お付き合いいただければ。 (※地図の話出てきませんけどね!)

著・編集部マスキ

出会いは腹痛とともに


ある日のこと。朝目が覚めると、お腹がとても痛かったんです。「何か変なものでも食べたかな?」「エアコンで冷えたのかしら?」などと考えたものの、まあ比較的よくあることなのであまり気にせず、下腹部・黄門様の要請に応じ、トイレに通うこと幾たびか、これを繰り返しておりました。しばらくして少し落ち着いたかな、というところで、出社するため家を出ました。 しかし駅に向かって歩いていると、やはり黄門様が騒ぎ出す。いや騒いでるのは門ではなく、門前に集まった暴徒たちなのですが、 「これは、すぐに門が破壊され、興奮した暴徒たちが溢れ出る気配…」 と危機感を抱く拙者。我慢している場合ではござらん。キケン!タイヘン!そこで、ちょうどすぐ横を通りかかっていた区役所へと駆け込み、お手洗いを借りることにしたのです。

おい待てって!あぶないって!だめだめ!

区役所マルシェで出会った“高嶺の宿”と1本のボトル


「ふうっ…」 無事にしかるべき処理を終えて(全部出た)、余裕をもったワタクシ。足取り軽く、胸を張り、区役所内の喫茶店前で腕を組み、したり顔でメニューを眺めたり、イベントのチラシを見るふりをしたり。すっかり上機嫌で油を売っておりました(早よ会社いけ!)。まあ、言うて区役所ですから、それ以上は大してすることもありません。下手すると不審者。良くて暇すぎる厄介住民。切り上げましょう。地下鉄入口に近い正面玄関から外へ。 するとそこに、交流都市なのでしょうか、裏磐梯エリア、福島県のとある村のプチ物産展が開かれておったのです。まず真っ先に、おいしそうな地元産トウモロコシが目に入りました。じゅるり。そのほか果物、調味料、ジュース、コーヒー、工芸品…、ふむふむ。 「そういえば、裏磐梯って言ったら『山塩』じゃないの(会津地方の温泉水から採れる塩。山塩ラーメン、山塩アイス、とてもおいしいのです)あれ置いてるかな・・?」とフラフラ、ウロウロしてたら、一番奥の、あるホテルのブース(と言っても、ワゴンですけどね)で話しかけられました。 話しかけてくれたのは支配人の方。聞くに、このホテルはもともと、ある企業の保養所だった施設で、それを買い取り、リノベーションして運営しているそう。裏磐梯の静かな森で、源泉かけ流しの温泉に、こだわりの美味しい料理と酒。心休まる時間を提供しており、クチコミ評価も非常に高い施設のようです。最近増えてきたオールインクルーシブの宿。一泊の宿泊料は、聞くと「ああ、ああすいません(汗)」と思わず謝っちゃうクラスの金額。 「普通に泊まることは、なさそうだなあ…」と思いつつも、手渡されたパンフレットがステキで興味を惹かれます。外観、お部屋、料理、周囲の自然。ん~いいなあ。もし泊まるとしたら、何か特別なお祝いがあった時か、風が吹いて桶がどうにかなってぼくが高給取りになったときか…。パンフレットの写真には、広大な土地に三角屋根の宿泊棟が静かにたたずんでいて、とても絵になります。 支配人さんは「ちょっと、高いですよね…」と若干申し訳なさそう。いやいや、稼げない僕が悪いのです。桶屋さんに転職しよう…。

マルシェ的なやつって、見ずにいられない

モノを欲するのは理屈ではなく感情からであると気づいた瞬間


さあ、ここからが本題なんです(前段長ぇわ)。このホテルのブース、何を売ってたのかといえば、そこにはウィスキーのボトルが2種類置いてあって、それだけなんですよ。ふつうこういう場なら、ホテルの朝食で出しているジャム、はちみつ、ピクルスの瓶詰だとか、スープの缶詰だとか、そういうの持ってくるじゃないですか。瓶とか缶とかみんな好きでしょ。でもねそういうのはなくて、ウィスキーだけ。シンプルというか、潔いというか。だから逆に気になっちゃったんですけどね。 じゃあそのウィスキー、いったい何モノなのかと。説明によると、やはりこのホテル専用のオリジナルブレンデッドで、地元福島の酒蔵・酒販会社と組んで作っているそうな。ホテルに宿泊すれば、食事の時などに飲めることもあるらしいのだけど、作る量も限られているので、いつでも飲めるわけじゃないとか。しかもホテルでは、ボトルの販売は基本的にしていないらしく、時々、こういう場でだけ売っていて、オンライン販売もなし。だからネットで検索してもほとんど情報が出てきません。 のっけから希少性ポイントが高いよ…。やるな。下手したらこの時点で買いたくなってる(←弱い)。残念ながら試飲はやっていないので、味や香りは支配人さんからのお話と見た目から想像するしかないのだけど、聞けば聞くほど、気になってくる。東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)2025で、洋酒部門 “ワールドブレンデッドウイスキー” 部門の「ベスト・カテゴリー賞」を受賞したとか、客観的評価も高いという。 そのほかのエピソードとしては、普段ウィスキーを飲まないような宿泊客の方が、気に入って3杯も飲んじゃった。とか。気心の知れた仲間とのキャンプ、そういう焚火の夜にも、とっておきのお酒として持っていくといいですよね。とか。お世話になっているだれかにプレゼントするっていうのもいいですね。とか。 ほ~、いいじゃないか。僕の心の中の井之頭五郎がつぶやく(井之頭五郎は下戸だってね)。

お酒ってきれいよな

なぜ人は、買わずにいられないのか


でも、お高いんでしょう? 「14000円です」 …うん。まあ、想像はしてた。してたけど、これはどう捉えればいいのか。お酒としては高い部類だよね。もちろん、上を見ればもっと高いお酒なんていくらでもあるけど、そういう話ではなくて。言ってしまえば、出せない額ではない。だけどでも、自分は特別ウィスキーに詳しくもないし、いろいろ飲み比べてるわけでもない。素人ですわ。そんな自分が買っていいんだろうか…?っていう微妙な感情。例えて言うなら、普段ほとんど料理なんてしないような人が、いきなり高級・高性能な包丁に魅せられて、買っちゃった、みたいな。普段野球、どころかキャッチボールもしないような人が、なぜか本革の職人が作った高級グローブを買ってきた、みたいな。…うん、まあ、いいか。いいじゃないか。 僕のそんな表情を読み取ったのか否か、支配人さん 「実は原価ものすごくかかってるんですよ。私(個人)だったらこれ3万円で売りますもん。いやほんとに。そして、ウィスキーですから、何年持っていてもいいですし、人生の節目で開けたり、記念日までとっておくという使い方も。仲間と飲むなら、他のウィスキーも持ってきて、一緒に飲み比べても面白いでしょうし。人生で、こういう"キラーとなる1本"をもっておくと、いいですよ。なかなか買えないものですから。私もとっておきのお酒、2本ほど持ってるんですけどね(ニヤリ)」 むむむ!キラーとなる1本!いいじゃない。 ここで買わんかったらアカン気がしてきたぞ。トイレに始まった縁。これは、ある種のゲン担ぎというか、ウン担ぎというか(笑)。 「わかった!買います!」 「ありがとうございます」 そんなこんなで14000円のウィスキーを購入したわけです。地元の区役所に来てたプチ物産展で、初めて知ったこんなお値段のウィスキーを買うってのは、なかなか思い切ったなあと、自分としては思いました。

購入したウィスキー。どんな味が、香りがするのか、楽しみだなあ

モノよりも、“自分の心”を買っているのかもしれない


まあ、14000円。どうとらえるかで高いとも、そうでないともとらえられる金額。 とりあえず後悔はないです。大して呑むわけでもない、詳しくもないけど、もちろん、お酒を飲むのは好きですし、味も香りも、好きです。ビールも日本酒もワインもウィスキーも。旅先でその土地のお酒を買うこともあります。だからこれを「持っている」ことによって、味や香りを想像したり、いつ飲もうかな、という妄想をしたり、そういう楽しみ方もできますし、こういうことがあったんだよって話のネタにもできる。うん。お金の使いどころとしては、悪くないんじゃないかな。そう、自分に言い聞かせながら、いつかこれを開ける日を楽しみにしておきます…。 というわけでおしまい!次回はもう少しツーリングに関係するお話を書こうと思います(笑)!引き続きよろしくおねがいします!

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