2025.12.02

【考察】バイクで人は若返るか―特殊相対性理論とバイクツーリング

みなさんこんにちは。ツーリングマップルのマスキです。今回のテーマは、ツーリングをサイエンス(?)しますよ。ずばり「バイクで人は若返るか」。くぅ~気になる!若返りたいよねみんな!取り戻せ青春!バイト終わりに「いっちょ行くか~」と走り出せたあのフットワーク!いくらでも食べ飲みできたあのカラダ!もう一度あの頃の自分に戻りたい! …ていう皆さんに、耳よりなウワサ…「バイクが若返りに貢献する」かも!?というわけで早速、行ってみましょう~!

著・編集部マスキ

実はな、身近におんねん。恐ろしく若いオジサンが


いやごめん、ウワサって言ったけど、ウワサなんてないんだった。だけどいるねん、バイクって若返るのかも…って本気で思えちゃう"症例"が…あまりにも身近に!

そうです!カソリです~(ずっこけ)

地球を庭にする男


賀曽利隆(カソリタカシ)78歳。冒険家であり、ツーリングマップルユーザーの皆さんにはおなじみ、東北エリアの取材担当でもある。実は僕の父親と同い年だ(父はすでに他界)。身体の事情は人それぞれなので、比較するのは申し訳ないが、生前の姿を思い浮かべてみても、今のカソリさんの方がよっぽど若い気がする。というか、たいていの世の中の78歳と比べたって、このオジサンの異常な元気さは突出している。 だいたいバイクでもうすぐ「生涯200万km(地球50周分)」ってのもおかしいし、80歳になったらまたバイクで日本一周するとか言ってるし、東京で打ち合わせした翌日に、電話で「マスキさ~ん!いま九州にいるんですよ~!」とか言ってくるし、全てにおいて僕らの常識を超えてくる。首都高で外壁に激突しようとも(*1)、痛風になろうとも(*2)、アキレス腱断裂(*3)しようとも、今日も明日もバイクにまたがり、地図を睨み、道を探し、誰よりも軽やかに走っている。それが賀曽利隆という男。 *1:首都高走行中、突然ウィンカーなしで車線変更してきたトラックを避けるため、自ら外壁にアタックした。当然大けがをし、バイク(DR-Z400S)のハンドルも曲がったが、骨折してないのでそのまま福島まで行き、雑誌取材を敢行した。 *2:青森で痛風にかかり、足が痛すぎてギアチェンジもできない中「4速」固定で神奈川県の自宅まで自走で帰ってきた。 *3:キャンプイベントでロープにひっかかり盛大にコケ、足を痛めたがそのまま1か月東北取材へ。帰ってきて病院に行ったらアキレス腱断裂と診断された。

2025年10月~11月は一般参加者を率いて、アフリカ縦断走行をしてきた

体調を崩して元気の源を考える


僕は常々、このおじさんの「元気のヒミツ」はなんなんだろうと思いながら一緒に旅をしている。観察していると、いろいろと推測できる要因はあるのだが、つい先日「これは!」という一つを閃いたので、今日はそれを皆さんにお伝えしたい。 11月某日、道祖神主催の「海外ツーリングの宴」というキャンプイベントが静岡県の梅ヶ島で催された。今回はカソリさんの「アフリカ縦断報告会」ということで、紅葉の盛り、空気冷え込む山奥の地にもかかわらず、多くの人が集った。ところが僕は、その前日に体調を著しく崩し、ひいひい言いながらたどり着くという体たらく。終始カラダはだるく、頭もぼんやりとしていた。 それでもせっかくきたのだから楽しまなければと、現地で出会った人とお話したり、テントの設営をしているうちに、あたりは次第に暗くなり、梅ヶ島の空はやがて、満天の星に埋め尽くされていった。夕餉を囲んで和やかに話すみんなの声を聞きながら、のんびりとした雰囲気にすこし体調も良くなってきた気がしていた。

仲間たちとの夕餉のひと時。僕はゼリー飲料を手に、湯たんぽで体を温めていた。

星空を眺めて、気づいてしまう


夜も更け、アフリカ報告会の時間が訪れた。スライドを投影しながら、カソリさんがケニアから南アフリカへ走り抜けた旅の解説をしている。僕はアウトドアチェアに座りそれを聴いていた。 それにしても元気すぎるな、この人は…。 体調を崩している自分がやや情けない。空を見上げると、しっとりと青黒い空に、ちょうど流れ星が一筋光った。ラッキーと思うでもなく、僕にはそれがなぜか、カソリさんがバイクに乗って嬉々としてこの宇宙を駆け巡っている姿に見えた。ああ、いつかそんな日が来たら面白いなあ。 でもいつかって、いつだろう。 『ツーリングマップル月』とか『ツーリングマップル火星』ができたら、なんて妄想することは今までもあったけど、実際に、宇宙旅行が気軽にできるような技術が確立・普及されるのはいったい西暦何年になるのか。ああ、未来にワープできたらいいのに…。 でも確か、相対性理論的には、未来へのワープ(に近いこと)は出来るんだよな。「物体は早く動けば動くほど、時間の流れがゆっくりになる」とされている。例えば宇宙船に乗って、光速に近いスピードで移動して帰ってきたら、宇宙船内では5年しかたっていないのに、地球では50年も経っていた。なんてことが、理論上は起こるのだ。SF作品でおなじみの現象だが、これはマジな物理法則である。だから僕らもその宇宙船に乗れば…ん?いや、待てよ…

アフリカ報告会で来場者に語りかける偉大なおじさん

もう乗ってた真理。「ツーリング相対性理論」


「物体は早く動けば動くほど、時間の流れがゆっくりになる…?」 僕は、目の前でしゃべっているおじさんを見ながらつぶやいた。よく考えたらこのおじさん、20歳の時から58年、200万km近く、ずっとバイクで移動してるんだよな。つまり、周囲の人に比べて、常に、早く、動き続けているってことだ。…おいおいおいマジか…。これってつまり、そういうこと…!?脳裏で「LOVEずっきゅん」が流れ始めた。 要するに、カソリンはすでに、相対性理論に乗ってたってわけだ。周囲に比べて常に、早く動いてきたということは、時間の流れが世間一般とは違うということ。なんてこったい。だからカソリンは若いのか。78歳とは思えないパワフルさを持っているのか。 うおお…発見してしまった…!これは宇宙の法則 ツーリング相・対・性・理・論…!

ツーリングタイムマシンブルース!

ピコ秒のカソリ


真理にたどり着いた興奮にもう少し浸っていたいが、ここで冷静にならねばならない。よくよく考えてみよう、バイクの巡行速度は早くてもせいぜい時速120~130kmまでだ。対して光速は、秒速30万km。桁がもう、宇宙レベルで違う。 カソリおじさんの時間は、理論的には確かに、周囲よりゆっくり流れていると言える。ただその差は、計算すればピコ秒以下だ。50年以上バイクで走り続けても、アンチエイジング効果は、時間にしてしまえばほんの僅かの短い時間なのだ。むむ…閃いて即撃沈か… ただこれを「誤差」のようなものだって、片づけたくはない。だってそんな人間、めったにいないでしょう。本当はどこか専門機関で研究してほしい。同じ78年を生きていても、彼は他の人よりピコ秒若いのだ。ピコ秒のカソリ。これはロマンだ。

シミ取りなんかに使われるピコレーザーなんてのもあるよね(ぜんぜん関係ない)

結局なんで元気でいられるの?


さて、ずいぶん長くなってしまった。 半分冗談、半分ロマン…みたいな語り口になってしまったけど、実は「バイクに乗ると人は若返る(っぽい)」という主張は、相対性理論は置いといて、完全に無根拠というわけでもないのだ。 いくつか、バイクと脳機能に関して興味深い研究、またアンケートがある。 1.東北大学 加齢医学研究所 × ヤマハ発動機の共同研究 「脳トレ」で有名な川島隆太教授とヤマハによって行われた実験により「二輪車乗車は前頭前野を活性化させる可能性」があるという報告がされている。例えば免許はあるけど長年乗っていなかった人が、再びバイクに乗り始めると記憶力・空間認知・ストレス指標にポジティブな変化が現れた、など。 2.オートバイ用品のナップスが行ったライダーの実態調査 これが非常に面白いアンケート結果なのだけど「ライダーの半数以上が、バイクにはアンチエイジング効果があると感じている」という結果が出ているのだ。ほかにも興味深い結果が見られるので、ぜひリンクから確認してほしい。

■あなたはバイクにアンチエイジング効果があると思いますか?(n=530・単一回答方式)

バイクに乗るということ、旅をするということ


「バイクに乗る」という行為は、常に先を読み、判断し、めまぐるしく反応し続けることが求められる。加えて「バイクで旅をする」ということには、地図を読み、初めての道を選び、天候を読み、地形を感じ、匂いを拾い、風を感じ、自然と人の営みを知ることが伴う。 人は「慣れた瞬間に老ける」と言われるが、バイクツーリングはその真逆にあるのではないだろうか。それをカソリさんは、何千回と続けているのだ。そしてどんなツーリングでも、毎回どこかで「未知」に出会っている。それは脳にとって、「永遠の青春」とも言えるだろう。 これだけの体験が、全身の細胞を活性化させ続けているのだと言われれば、よもや納得しない理由はない。まして、我々ライダーなら、バイクに乗ることでストレスが軽減したり、体の調子が良くなったと感じたことがある人も多いのではないだろうか。 かくいう僕も、前述のキャンプイベントに行く際、バイクに乗っているときは不思議としんどさはあまり感じなかったのだ。乗る前はしんどくて仕方なかったのに、走りだした途端、心身ともに軽くなる。そんな不思議な効能がやはりバイクにはある。まあその分、降りたときにドッと疲れが来ることもあるのだけど。

地図がこうなるくらい、ツーリングをフルに楽しむのが元気の秘訣なのかも

とはいえバイクには危険もつきもの


そんなわけで、バイクにはアンチエイジング効果がある、と僕は思う。だからみんなバイクに乗ろうぜ! …っと言いたいところだけど、バイクは事故を起こした時のダメージが、他の乗り物に比べて大きいことも事実。だから何より、安全運転に努め、体調や天候など、コンディションが悪い時には無理しないように気をつけて、適度に乗って、楽しもう。 ここまで読んでくれて感謝。ではまた次回の考察で!

梅ヶ島の空はきれいでした

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